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「自分の世界を広げてくれる本との出逢い方」と「村上春樹さんを初めて読んだ時の衝撃」【角田陽一郎×加藤昌治】

あんちょこ通信 第5回


ビジネスパーソン専用の初のお悩み解決辞典として注目を浴びている『仕事人生あんちょこ辞典』著者の角田陽一郎、加藤昌治が、みなさまから届いた「仕事人生のお悩み」にパシパシ答えていきます。今回の質問は、ずばり「本」についてです。“自分の世界を広げてくれる本との出逢い方”と“村上春樹さんの本を初めて読んだ時の衝撃” を読書の達人ふたりに語っていただきます。


村上春樹さんの6年ぶりの長編小説「街とその不確かな壁」が4月13日、全国の書店で発売された

 

 

■相談者の質問

「GWの空いた時間に本を読もうと思っています。これまで読んだことのないジャンルの本が読みたいのですが、どうやって見つければいいのでしょうか?」

 

角田さん、加藤さんともに読書家ですが、どうやって本と出会っているのでしょうか?

 

 ■今は、その本と「出会う」タイミングではないのかもしれない

 

加藤:「どんな本を読めばいいのか」という質問だけど、「なんでもいいんじゃないの?」がかとうの回答かな。とはいえ、本とは・・・やっぱり当たり外れや、「べつに今読まなくてもよかったな」みたいなことがあるから、その時に途中でやめる勇気を持つことが大事だと思います。

 

角田:僕も全く同じことを言おうと思ってた!

 本が読めない人って、「読まなきゃいけない」と思ってるんだよね。でも、僕の読書をプロデュースという本にも書いてあるんだけど、むしろ「読まなくてもいいや」って投げ捨てる勇気が必要なんだ。

 その上で最後まで読めた本が「面白い」ということでいいんじゃないかなと思う。「買ったんだからもったいない」みたいに考えないほうがいいと僕も思います。

 

加藤:それに、本は安いですからね。

 

角田:高くても2000円しないよね……と言いながら仕事人生あんちょこ辞典の価格は2700円+税だけど。でも2冊分以上の分量があるからね。

 

加藤:本が本として出版されているということは、出す価値があると著者も編集者も版元も思ったわけですけれど、それとは別に「自分との相性」ってやっぱりあるじゃない。その意味でずっと相性の悪い本もあれば、いつかタイミングが訪れる本もあるよね。

 

角田:それで言うと、僕はガルシア=マルケスの百年の孤独に何回もチャレンジして、いつも読めななかったんですよ。20歳ぐらいで初めて手に取って、それから5年ごとぐらいにチャレンジしてたんだけど、いつも結局最後まで読めなかった。

 でも40歳ぐらいになってから読んだら、これが面白くて、あっさり読めちゃったんです。こんなふうに、読めなかったところから何度も繰り返して、読めるに至るまでの期間が「読書」だとしたら、それは読書体験として一番面白いんじゃないかな。

 

加藤:なるほどねぇ。

 

ガブリエル・ガルシア=マルケス『百年の孤独』

 

角田:歳を取ってからようやく読める本なんて死ぬほどある。もうひとつ例を挙げると、ハタチぐらいの時に予備校の古文の先生が「鷗外は『渋江抽斎』が一番面白かった」って言ってたから、「そんなに面白いのか?」と思って読んでみたんだけど、これが当時は全然読めないわけだよね。

というのも、『渋江抽斎』ってただの日記で、「この時に何を食べて、誰と出会って」というのが延々と繰り返されてるだけなんです。それをその予備校の先生は「一番面白い」と言ってて、当時は意味が分からなかった。

 ところが、これも数年前に読み返したら最高に面白かったんだ。

 

加藤:お、そうなんだ。

 

角田:「森鷗外、天才だな」と思ったけれど、それはやっぱりハタチじゃ分からないんだよ。森鷗外が『渋江抽斎』を書いたのは50代の頃だから、やっぱり50になると分かることがあるんだと思う。

「そういうことがある」という体験まで含めて「読書」なんだと思う。だから、読めない本があったら積ん読にして、本棚に置いておくといいんじゃないかな。

 

加藤:最近は新刊点数が多い分絶版になる本も多いですが、それでも図書館や古書も含めて、昔の本に出会いやすい環境になっていることも事実ですから、逆に一回手放してしまってもいいと思っています。

 

森鷗外『渋江抽斎』

 

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角田 陽一郎/加藤 昌治

かくた よういちろう かとう まさはる

角田 陽一郎(かくた・よういちろう)

バラエティプロデューサー/文化資源学研究者 

千葉県出身。千葉県立千葉髙等学校、東京大学文学部西洋史学科卒業後、1994年にTBSテレビに入社。「さんまのスーパーからくりTV」「中居正広の金曜日のスマたちへ」「EXILE魂」「オトナの!」など主にバラエティ番組の企画制作をしながら、2009年ネット動画配信会社を設立(取締役 ~2013年)。2016年TBSを退社。映画『げんげ』監督、音楽フェスティバル開催、アプリ制作、舞台演出、「ACC CMフェスティバル」インタラクティブ部門審査員(2014、15年)、SBP高校生交流フェア審査員(2017年~)、その他多種多様なメディアビジネスをプロデュース。現在、東京大学大学院にて文化資源学を研究中。著書に『読書をプロデュース』『最速で身につく世界史』『最速で身につく日本史』『なぜ僕らはこんなにも働くのだろうか』『人生が変わるすごい地理』『運の技術』『出世のススメ』、小説『AP』他多数。週刊プレイボーイにて映画対談連載中、メルマガDIVERSE配信中。好きな音楽は、ムーンライダーズ、岡村靖幸、ガガガSP。好きな作家は、ホルヘ・ルイス・ボルヘス、司馬遼太郎。好きな画家は、サルバドール・ダリ。

                                                             

加藤 昌治(かとう・まさはる)

作家/広告会社勤務

大阪府出身。千葉県立千葉髙等学校卒。1994年大手広告会社入社。情報環境の改善を通じてクライアントのブランド価値を高めることをミッションとし、マーケティングとマネジメントの両面から課題解決を実現する情報戦略・企画の立案、実施を担当。著書に『考具』(CCCメディアハウス、2003年)、『発想法の使い方』(日経文庫、2015年)、『チームで考える「アイデア会議」考具応用編』(CCCメディアハウス、2017年)、『アイデアはどこからやってくるのか 考具基礎編』(CCCメディアハウス、2017年)、ナビゲーターを務めた『アイデア・バイブル』(ダイヤモンド社、2012年)がある。           

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