松田公太「コロナで客が来ないから」外食産業の家賃棒引き法の無法地帯 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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松田公太「コロナで客が来ないから」外食産業の家賃棒引き法の無法地帯

【連載】「コップの中の百年戦争 ―世の中の不条理やカラクリの根源とは―」

■「外食産業の声」という団体は、なぜか偉そう

 一方、不動産ファンドやREITなどで手がける商業物件(例えば駅ビルとか大手再開発で建てた商業ビルなど)は、オサレなスターバックスや靴を一杯売ってるABCマートなど、どこでも見かけるチェーン店が入っています。こういうところは、例えば「今度こういう商業ビルを建てたので、最低2年間、ここに入ってください」という契約を結んで、お願いしてテナントに入ってもらいます。場合によっては「あ、賃料とか無粋なこと言いませんので、売上の2割5分をテナント料として頂戴したいです、あ、いや、そこはまあ共存共栄ということで。ええ」などと額を叩きながら誘致します。この数字は、入る業態や売り上げの大きさ、ブランドの強さ、収益率などで変わりますが、基本的に「テナントに入って欲しいかどうかで決まる」のは言うまでもありません。

 そうなると、何か突然セブンイレブン本社から電話が掛かってきて光速で減賃交渉が始まったり、某大手バーガー屋から「営業中止するんでテナントからの利益配分ゼロになります」という『通告』をもらったりします。聴く側からすれば涙が止まらない展開になりますね。

 しかしながら、ここで集っている「外食産業の声」とかいう団体は、なぜか偉そうです。賃料を踏み倒そうという話なのに。

 「不動産オーナーにテナントとの話合いに応じることを義務化」とか「日本全体が厳しい今、“痛みの分かち合い精神”で減免交渉に応じることを義務化」などと話しています。賃貸契約書読めば書いてある通り、通常は誠実協議義務があるので、こんなこと言われなくてもテナントが「相談ある」と言われれば会って話ぐらいはしますよ。応じませんが。また、日本経済全体が厳しいというのは分かりますけれども、そういう「外食産業の声」とかいう徒党を組むような面倒なテナントには出て行ってもらいたいんですよね。面倒くさいから。そして、多少賃料は下がっても普通に話ができるテナントに新たに入ってもらいたいのです。

 いずれ、不動産賃料の相場はコロナウイルスの影響が大きければ大きいほど下がっていくのは当然です。うっかりテナントに出て行かれたら、借入でB/Sがパンパンになってるような不動産オーナー会社や不動産ファンド、カタカナ系デベなどはチンパンジーなので一気に元金返済や利払いに詰まって自分が期限の利益を喪失してサービサー送りになることもあるかもしれません。でも、苦しいからこそ痛みを分かち合うという不動産オーナーがいたとしたらその人は単なる素人であって、契約書で決まった賃料を払えないテナントが出たらまず電話する先は保証会社ですよ。「おたくに差し入れてもらってるあそこの飲食店、払えないって言ってきたんですけど」って。

 

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山本 一郎

やまもと いちろう

著作家、ブロガー、投資家、経営者

1973年東京都生まれ。著作家、ブロガー、投資家、経営者。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。2000年IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作を行うイレギュラーズアンドパートナーズ株式会社を設立。著書に『情報革命バブルの崩壊』『俺様国家中国の大経済』『ネットビジネスの終わり』ほか。   ブログ「やまもといちろうオフィシャルブログhttps://lineblog.me/yamamotoichiro/  

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