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インフルエンザ永遠の宿主「カモ」にカモられる人間! 話題の感染免疫学の専門家・岡田晴恵教授が提言‼︎【新型コロナウイルスとの闘い方④】

新型インフルエンザを出現させる犯人はだれ?

 

 インフルエンザ3タイプの中で、今回は「新型インフルエンザ」「鳥インフルエンザ」について見ていこう。

  2. 新型インフルエンザウイルス

 新型が出現すると、それまで流行していたインフルエンザウイルスは消え、この新型インフルエンザウイルスにとって代わられる。そして、以降、この新型インフルエンザウイルスが毎年マイナーチェンジ変異をくり返しながら流行する。

 しかし突然、新しいウイルスが出現した時には、地球上のほとんどすべての人が免疫を持たないために、新型ウイルスに曝されれば感染することになる。その結果、世界中で大流行が起きることになる。また、過去のインフルエンザ感染によって獲得した免疫記憶による交叉免疫防御機構は働かず、そのため症状も重くなりやすく、健康被害は甚大なものとなる。

   3. 鳥インフルエンザ

 じつはこの新型インフルエンザを出現させる犯人が、鳥インフルエンザである。ウイルス遺伝子の詳細な検索から、鳥インフルエンザウイルスの変化によってヒト新型インフルエンザが出現したことが科学的に検証されている。

 スペインかぜも、鳥インフルエンザの遺伝子変異によって新型インフルエンザとして出現した。同じく1957年のアジアかぜ1968年の香港かぜも鳥インフルエンザに由来している。このことから分かるように、鳥インフルエンザが鳥の間で広く流行しているということは、まさに新型インフルエンザ出現の前触れということになる。

◼️ウイルスが潜り込める生物の幅が広く、難しいコントロール

 A型インフルエンザウイルスの特徴として、ここで重要な知見を挙げておかねばならない。それは、このウイルスが潜り込む生物の種類、つまり宿主域が非常に広いということである。カモ、白鳥などの水鳥や、鶏、七面鳥などの家禽から、ブタ、人、アザラシ、果ては鯨に至るまで、このウイルスは広範囲な動物種をターゲットにする。インフルエンザは、地球最大規模の人獣共通感染症なのである。

 麻疹天然痘は人にしか感染しないので、すべての人にワクチンを接種することによって流行を阻止し、コントロールできるが、動物まで含む人獣共通感染症では困難である。なかでも、 野生動物までも広く関わるインフルエンザではとくに難しい。

宿主域

 そして、図に示すように、インフルエンザに罹患する動物の中心に水鳥のカモがいる。 鳥インフルエンザは、水鳥を中心として自然界に存在し、鶏や七面鳥などの家禽にも感染する。 通常の鳥インフルエンザウイルスは病原性が低く、鳥の呼吸器や消化器にのみ感染して症状を示さない。

 しかし、この鳥インフルエンザの中でもH5とH7亜型では、稀に病原性の強いウイルスが出現する。2003年末から現在まで、特に病原性の強いH5N1型高病原性ウイルスが東南アジアや中国、ロシアに至る広い地域で流行しており、ヨーロッパ、アフリカへ矛先を向けている。ベトナムやタイ、インドネシア、カンボジア、中国、トルコなどでは人にも感染し、重症化したり死亡したりするケースも報告されている。

 日本でも、2004年1月に山口県で、また2月には大分県、さらに京都府、大阪府でも鶏の間で流行し、これらの養鶏場でH5N1型が検出されて大量の鶏が処分され、消石灰を撒かれて埋め立てられた映像は記憶に新しい。これとは別に、病原性の低いH5N2型鳥インフルエンザが2005年6月、茨城県の養鶏場で、続いて埼玉県で発生している。

鳥インフルエンザの流行は、人の新型インフルエンザ流行の前触れ?!

 しかし、鳥インフルエンザの危険性についての世間一般の理解は、まだ十分というにはほど遠い。流行っているといっても「鳥の病気」が蔓延しているだけだとか、海外の流行地で鶏を食べたり、鳥に直接かかわる職業の人間でないかぎり、自分たちには危険はないといった認識が一般的ではないだろうか。

 すでに述べたように、鳥インフルエンザの流行は、人の新型インフルエンザ流行の前触れである可能性が高い。しかも、現在流行中のH5N1型は人でも全身感染を起こし、いったん発症すると致死率が50%を超える高病原性ウイルスである。これが遺伝子の変異を起こして人の新型インフルエンザに変身すれば、それはもう鳥インフルエンザではない。鳥の病気から人間の病気へと、一気に健康被害が移行するのである。

◼出現のメカニズム 〜年月をかけてカモと共存関係を構築〜

 インフルエンザウイルスは、カモの腸管の中に永遠の住処を見つけ出したウイルスである。カモという宿主を殺すことなく、その腸管の中ではH1〜、N1〜9までの全種類のインフルエンザウイルスが存在する。インフルエンザウイルスは子孫を安定的に繁栄させ続けるために、途方もない年月の末に、カモに適応してカモと共存できる宿主関係を構築したのだ。

 カモは渡り鳥で、夏はアラスカやシベリア等の湖沼で雛を育て、冬は中国南部等の越冬地にやってくる。この飛翔航路をカモに便乗しながら、インフルエンザウイルスも人の住む地域圏へとやってくる。越冬地の水場で、アヒル、ガチョウや鶏などの家禽類と同居することになると、カモの糞便中に排出されたウイルスが水場を汚染し、その水を飲んだ家禽類にも感染する。その結果、飼育された鶏の間での流行が始まる。 ここまでは、水鳥から家禽へ(鳥から鳥へ)という感染である。それが、鳥から人へと鳥インフルエンザが感染するという新たな事例が見つかることになった。1997年の香港である。

◼️患者は重症化、死亡割合が高く、直接人に感染する衝撃!

 このとき、18人が鳥のH5N1型ウイルスに感染し、うち6人が死亡している。 この報告は、インフルエンザの専門家たちに衝撃を与えた。従来のインフルエンザの常識からは、鳥のインフルエンザウイルスが直接人に感染するとは、予想だにできなかったからである。しかも、鶏を100%殺してしまう高病原性のウイルスであった。また、これに感染した患者も重症化し、死亡する割合が高いことも驚くべきことであった。
「新型コロナウイルス感染症と闘う⑤」へつづく)

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