【【注目の岩田健太郎教授が分析】おにぎりって素手で握っちゃいけないの? <br /><感染リスクについて考える>細菌感染を阻む当たり前の基本原則~】 | BEST TiMESコラム

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【注目の岩田健太郎教授が分析】おにぎりって素手で握っちゃいけないの? 
<感染リスクについて考える>細菌感染を阻む当たり前の基本原則~

インフルエンザ なぜ毎年流行するのか⑥

——新型コロナウイルスが猛威をふるうなか、発生源の中国だけではなく、日本でも感染者が日々増え続け、その影響はもはや世界規模にも及んでいる。
 強い感染力で話題のコロナウイルスだが、日本人が愛して止まない「おにぎり」を手で握ることで感染リスクはあったりするのだろうか?
 今回、感染症診療の第一人者であり、神戸大学大学院医学研究科感染治療学分野教授・岩田健太郎氏の著書『インフルエンザ なぜ毎年流行するのか』(KKベストセラーズ)から、おにぎりは素手で握っちゃいけないか、否か問題をクローズアップ。細菌の感染経路と感染源の遮断の基本原則を伝授します。おにぎりを握る前に、読んでみてください!

◆おにぎりは素手で握るか、ラップで握るか!

 外で食べてよし、中で食べても美味しいおにぎり。自分で作ってお弁当に入れてもいいし、コンビニでも買えるということで、日本食文化に確たるポジションを占めているレシピがおにぎりです。

 確かに、おにぎりは美味しい。でも、ご存知でしょうか。実はおにぎりには感染症のリスクがあるんです。

 それは、食中毒。

 人間の手にはバイキンがたくさんついています。バイキンは、正確には細菌といいます。多くは「常在菌」と呼ばれている菌たちで、別に人間の健康に悪影響を与えたりはしていません。

 それどころか、人間の体から常在菌がいなくなってしまうとむしろ健康には有害なんです。常在菌と人間は共生しているんですね。むやみに抗生物質を飲んではいけないのはそのためで、抗生物質は悪い菌だけでなく常在菌も殺してしまうんです。が、この話はまた別のところで。

 さて、というわけで、手についている菌もたいていは無害な常在菌なのですが、なかには病気の原因になるような菌がついていることもあります。

 その代表格が、黄色ブドウ球菌。菌の塊が黄色なので、黄色(おうしょく、と読みます)、そして顕微鏡で見るとぶどうの房のようにまんまるな菌が連なっているので「ブドウ球菌」、あわせて「おうしょくぶどうきゅうきん」と呼びます。名前、長いですねー。でも、感染症のことを知りたかったら、この長い名前に耐える必要があります、がんばって。

 ちなみに、感染症のプロになりたかったら、ラテン語の名前も同時に覚えなくてはなりません。Staphylococcus aureus、スタフィロコッカスオウレウスと呼びます、あー長い。staphylo がぶどうのような、coccus がまるい、aureus が黄色い、という意味です。みなさん、まだついて来てますか?

 さて、黄色ブドウ球菌はいろんな病気の原因になるのですが、そのひとつに食中毒があります。エンテロトキシンという毒を菌が作り、これが腸に入って下痢とか嘔吐(おうと)の原因になるのです。

 で、例えばある人の手に黄色ブドウ球菌がくっついていて、そのブドウ球菌がエンテロトキシンを作っている。で、この手でおにぎりなんかを作ったりすると、おにぎりにエンテロトキシンがくっつく。で、このおにぎりを人が食べると、ゲーゲー吐いたり、ピーピー下痢をしたりする、というわけです。

 菌が増殖しやすい暑い夏場は特に、食中毒を起こしやすくなります。特に菌が増殖するための、一定の時間をおいてから食べる場合……ピクニックのために朝握ったおにぎりをお昼に食べる、みたいな……のときには要注意です。

 そんなわけで、手袋を着用したり、サランラップを使って素手でおにぎりを握らないよう、推奨している専門家もいるようです(https://news.yahoo.co.jp/byline/naritatakanobu/20170831-00075192/)。

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KEYWORDS:

『インフルエンザ なぜ毎年流行するのか』
著者/ 岩田健太郎

本屋さんの「健康本」コーナーに行くと、たくさんの健康になる本とか、病気にならない本とか、長生きする本とか、若返る本とか、痩せる本とかが売っています。ところが、そのほとんどがインチキだったり、ミスリーディングだったり、センセーショナルなだけだったり。要するに「ちゃんとした」本がとても少ないのです。そういうわけで、感染症や健康について、妥当性の高い情報を提供しようと、本書をしたためました。

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岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


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  • 2018.11.09