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【注目の岩田健太郎教授が分析】しゃかりきな、水際対策、意味あるの?―日本の過去の感染症対策を振り返るー

インフルエンザ なぜ毎年流行するのか③

——新型コロナウイルスが猛威をふるうなか、発生源の中国だけではなく、日本でも感染者が日々増え続け、その影響はもはや世界規模にも及んでいる。

勢いは増すばかりで、日本も対策に迫られている。そのひとつが水際対策なのだが、最近では、国内外から賛否両論。迅速だったという人もいれば、遅すぎるという人も……。

感染症診療の第一人者であり、神戸大学大学院医学研究科感染治療学分野教授・岩田健太郎氏の著書『インフルエンザ なぜ毎年流行するのか』(KKベストセラーズ)から、過去に流行した感染症に対する日本の「水際対策」について議論する。

今、日本が本当にするべきことは何か? 順序立てて考えてみよう。

 

 

◆「水際対策」はうまくいったのか?

 

2002–03年に中国を中心として「SARS(サーズ)」という感染症が流行しました。日本では「水際対策」といって、海外から入国するときに体温を測ったりして、対応しました。

 

前述のように2009年にも「新型」と呼ばれるインフルエンザ(もう10年近くも前のことですが、今「新型」と呼ぶのはとても違和感がありますね。なんと呼べばよいのやら……)が流行しました。メキシコとかアメリカとかカナダで発生したウイルスに対し、「水際対策」として日本に入ってこないような対策をとりました。

 

しかし、水際対策はうまくいったのでしょうか。

 

例えば、SARS。幸い、日本での患者の発生はなかったのです。よかったあ。さすがは日本の感染対策、うまくいったよなあ。

 

……と思ってはいけません。

 

なぜかというと、2002–03年に流行したSARSは世界のあちこちに患者をもたらしましたが、日本には患者がやってこなかったのです。

 

つまり、「水際対策」がうまくいってSARSの日本侵入が阻まれたわけではないのです。たまたま偶然、日本にはSARS患者がやってこなかった。ラッキーだったのです。これは、2014年に韓国で流行して問題になった中東の感染症、MERSについても同様です。

 

そして、前述の2009年、「新型」インフルエンザ。

 

これは3月頃からアメリカ大陸のあちこちで流行しだしたのですが、結局日本には5月に持ち込まれ、神戸市で国内発症がありました。そのあと全国レベルで広がっていったのはご存知の通り。

 

では、「新型」インフルに「水際対策」がうまくいったのか? これにはいろんな意見があります。が、少なくとも、はっきりと「うまくいった」と示すようなデータはありません。

 

水際対策に何らかの意味があるのか?

 

もちろん、なんにだって意味はあります。

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KEYWORDS:

『インフルエンザ なぜ毎年流行するのか』

著者/ 岩田健太郎

 

 

本屋さんの「健康本」コーナーに行くと、たくさんの健康になる本とか、病気にならない本とか、長生きする本とか、若返る本とか、痩せる本とかが売っています。ところが、そのほとんどがインチキだったり、ミスリーディングだったり、センセーショナルなだけだったり。要するに「ちゃんとした」本がとても少ないのです。そういうわけで、感染症や健康について、妥当性の高い情報を提供しようと、本書をしたためました。

 

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岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


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  • 2018.11.09