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【注目の岩田健太郎教授が語る】感染症といえばワクチン!それ ホントに効いてるの?~ワクチンの効力~

インフルエンザ なぜ毎年流行するのか⑤

◆インフル・ワクチン効果あり、さらに非常に安全! 

 野球でも3割バッターはよいバッターです。打席に立つたび必ずホームランを打つのは漫画の世界の話でして、現実世界は3割は上出来なんです。インフルエンザ・ワクチンもそのくらいの気持ちで認識していただければいいわけです。
 というか、インフル・ワクチンの素晴らしさはその効果の大きさ「そのもの」にはありません。

 36%なんて、ワクチンとしての効果は控えめな方ですよ。でも、このワクチン、効果が安定しているのです。毎年インフルエンザ・ワクチンは(その年の流行しやすい株に合わせて)ちょっとずつ違うワクチンに仕立てているのですが、前述のCDCによると、2006–07年シーズンから2017–18年シーズンまで「毎年」必ず一定の効果をもたらしています。ただし、2004–05、2005–06年のシーズンは効いていなかったみたいです。
 しかし、これだけコンスタントに効果が安定しているワクチンというのは素晴らしい。
 一番効かなかった2014–15シーズンでも19%、特に効いていた2010–11年では60%でした(前掲)。
 バッターに例えるならば、非常に安定感のある、ムラのないスグレモノという感じです(数字の説明は一般の方に分かりやすいよう、若干「端折(はっしょ)って」ますが、本質的には間違った説明ではないと思います)。

 というわけで、インフル・ワクチンは「本当に」効いています。毎年、安定した効果を発揮しています。ただ、その効果はそれほど大きくなく、ワクチンを打ったほうが若干、インフルエンザになりにくい。だから、ワクチンを打っていてもインフルエンザになる不運な人もいますし、ワクチンを打っていなくてもインフルエンザにならないラッキーな人もいる。しかし、総じてワクチンを打ったほうがインフルエンザにはなりにくい。そして、その恩恵を受ける人は(インフルエンザに苦しむ人の総数が多いために)、とてもたくさん、ということになるのです。

 ワクチンの「効く」はこのようになかなかにややこしくて難しいのです。もっと詳しく知りたい! という方はぜひ拙著『予防接種は「効く」のか?』(光文社新書)というそのものズバリなタイトルの本をご参照ください!

 ですから、ぼくもうちの奥さんもうちの娘たちも毎年必ずインフルエンザワクチンを接種しています。

 そうそう、インフル・ワクチンのよいところは他にもあります。それはワクチンの安全性。非常に安全性が高く、ワクチンを打てない人はほとんどいません。妊婦さんでも6ヶ月以上の小さな子どもでも打てますし、持病を抱えている、免疫の弱った患者さんでもOKです。昔は卵アレルギーがあるとワクチンを打ってはいけない、と言われていましたが、現在では積極的に接種するメリットのほうが大きいので推奨されるようになりました
(CDC. Flu Vaccine and People with Egg Allergies [Internet]. Centers for Disease Control and Prevention. 2017 [cited 2018 Aug 20]. Available from: https://www.cdc.gov/flu/protect/vaccine/egg-allergies.htm)。

 ところで、日本では小児は毎年インフルエンザ・ワクチンを2回打つよう言われますが、アメリカなど海外では生まれて初めて打つとき以外は、毎年1回でもOKとされています。何度も病院に行くのは(連れて行くのは)大変ですから、朗報ですね! 
「2回も行けないからワクチン打てない」じゃなくて、「1回でもいいから、ぜひ打とう」と方針変更しましょう!
(Children, the Flu, and the Flu Vaccine | Seasonal Influenza (Flu) | CDC [Internet]. 2017 [cited 2018 Aug 20]. Available from: https://www.cdc.gov/flu/protect/children.htm)。

Children 6 months through 8 years getting vaccinated for the first time, and those who have only previously gotten one dose of vaccine, should get two doses of vaccine this season. All children who have previously gotten two doses of vaccine (at any time)only need one dose of vaccine this season.

 とCDCのHPに書いています。これは、6ヶ月から8歳の小児で生まれて初めてワクチンを打つ人と、過去に1回しかワクチンを打っていない人は、1シーズンで2回のワクチンを打ちましょう。過去に2回のワクチン接種を打った人は(2回接種がいつだったかは関係なし!)、1シーズンで1回接種するだけで十分です。
 という意味で書かれています。この英語の条件のところを読み飛ばし、「小児ではワクチンは2回、アメリカでもそう」と誤解している人は多く、医者でも誤解されている人がいます。案外、英語読むの苦手なドクター多いんですよねー。

KEYWORDS:

『インフルエンザ なぜ毎年流行するのか』
著者/ 岩田健太郎

本屋さんの「健康本」コーナーに行くと、たくさんの健康になる本とか、病気にならない本とか、長生きする本とか、若返る本とか、痩せる本とかが売っています。ところが、そのほとんどがインチキだったり、ミスリーディングだったり、センセーショナルなだけだったり。要するに「ちゃんとした」本がとても少ないのです。そういうわけで、感染症や健康について、妥当性の高い情報を提供しようと、本書をしたためました。

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岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


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  • 2018.11.09