横浜シーサイドライン途中下車の旅 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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横浜シーサイドライン途中下車の旅

水族館あり庭園あり博物館あり、首都圏のお出かけにおすすめ

新杉田駅

 横浜市南部にあるJR根岸線の新杉田駅(磯子区)と京急本線金沢八景駅(金沢区)を結ぶ新交通システムは、横浜シーサイドラインが運営する金沢シーサイドラインという路線である(ややこしいので以後、駅などの表示に従って単にシーサイドラインと書く)。
 ずいぶん以前に乗って以来ご無沙汰していたら、長らく京急の駅とは離れたところに位置していた仮設の金沢八景駅が2019年3月末にやっとのことで延伸して京急の駅と直結したというニュースを耳にした。さらに、6月には新杉田駅で車両の逆走事故が起き、シーサイドラインの名前はメディアを賑わすこととなった。事故後の対策も収まり、通常の無人運転に戻って落ちつきを取り戻したようなので、久しぶりにふらりと乗りに行くことにした。
 JR根岸線の新杉田駅で下車し、シーサイドラインの案内表示に従って進むと起点の新杉田駅がある。シーサイドラインは初乗りが230円(2019年10月1日からは240円、ICカード利用なら234円)と割高なので一日乗車券670円(10月1日から680円)を購入した。自動券売機で購入したので図柄など期待していなかったのだが、イラスト入り路線図のカラー磁気カードだったので嬉しくなった。
 さっそく改札口にカードを投入してホームへ。左側に5両編成の電車が停まっていた。新交通システムの車両なので、各車両の真ん中にドアが1ヶ所だけある小さな車体だ。発車時刻が迫っていたせいもあってほぼ満席。一部にクロスシートがあるのは嬉しい。どうせ座れないのならと、先頭車両の運転席に向かった。先客がいて座れなかったものの、先客が運転士だと思えば悔しくない。前面展望が楽しめるので、立っていても苦痛とは思わなかった。

首都高に沿って走る

 走りだすと左手は首都高速湾岸線の高架が並走している。背の高い防音壁が視界を遮っているため海など全く見えず、これではハイウェイサイドラインだ。最初の南部市場駅から金沢区に入る。この辺りはおおむね右側が住宅地、左側が工場地帯と分かれている。さらに鳥浜、並木北と停まり、次の並木中央駅は車両基地の最寄り駅だ。そのため2面3線のホームで、真ん中の軌道は、駅を出ると立体交差で左手へ分かれて車両基地へ向かう。本線のトラス橋が目立つ。
 鬱陶しかった高速道路が姿を消し幸浦(さちうら)に停まるとカーブが連続する。産業振興センター駅の次は福浦駅。さきほどの幸浦とペアにすると幸福となり縁起のよい駅名として密かに知られているようだ。電車は高いところを走っているので、左手を眺めていると建物の遥か先に海がかすかに見えている。それでもシーサイドラインには程遠い。

市大医学部駅付近

 右に大きくカーブすると市大医学部駅。途中下車してみる。改札を出て右に進むと、横浜市立大学附属病院の入口がある。雨に濡れないで病院へ行けるので通院者には有難いだろう。病院に用はないので、歩道に降り、交差点を右に曲がって海の方へ向かってみた。日産のカスタマーサービスセンターを過ぎ、緑地帯のある岸壁に行こうと思ったのだが、立ち入り禁止になっている。先の台風でかなりの被害を受けたようだ。付近の工場もかなり浸水被害を受けたとのこと。一日も早い復旧を祈りたい。

やっと海が目の前に迫ってきた

 駅に戻ってシーサイドラインの旅を続ける。直進すると前方に海が見えてきた。そのまま海に突入するかと思いきや、大きく右にカーブして潮風を浴びながら気持ちよく走る。ようやくシーサイドラインにふさわしい車窓が現われた。電車はジェットコースターのようにアップダウンするので見晴らしはすこぶる良い。左手にはレジャー施設八景島シーパラダイスがよく見える。今度は思い切りよく海を渡り、右にカーブして八景島駅に到着。ここで降りない手はない。

 

八景島付近を走るシーサイドライン

八景島シーパラダイス内を走るシートレイン

 ホームドアの壁面や階段の壁には可愛らしいイラストであふれている。いかにもレジャー施設の最寄り駅という雰囲気だ。改札を出て左に進み、海に架かる橋を渡ると八景島シーパラダイスだ。平日だったので空いている。施設のオネーさんがパンフレットを配っている。入場料はなく、敷地内を散策するのは自由。乗り物利用や水族館のような建物に入る時に料金を払うシステムだ。うろうろしていると汽笛が聞こえ、振り返ると汽車の形をした列車風バスがやってきた。こうしたレジャー施設でよく見かける乗り物だ。さらに散策するとアクアミュージアム前広場に、サンフランシスコのケーブルカーの車体をイメージしたカフェが目についた。

称名寺境内

 駅に戻り、再びシーサイドラインに乗る。電車は海の公園の一番陸地側を走る。左手は緑豊かな林が続く。4分程乗って、海の公園柴口駅の次に停車する海の公園南口駅で降りてみる。少し戻るように歩き、2つ目の信号を左へ進むと称名寺の広い境内があり、どんどん進むと阿字ヶ池を中心とした浄土庭園が広がっている。左奥のトンネルをくぐったところに博物館となっている金沢文庫があったのだが、残念ながら臨時休館だった。

野島公園駅に停車中の電車

 ちょっと骨折り損のくたびれ儲けの感があり、急に疲れが出たのだが気を取り直して電車に乗る。海の公園南口駅を発車するとシーサイドラインは再び海に出て、右にカーブして野島公園駅に停車する。左手下は船溜まりになっていて海らしい情景だ。発車すると平潟湾を横切り、海沿いに右にカーブして進む。小舟が数多く停泊しているのを見ていると電車は左にカーブして新しくできた金沢八景駅のホームに滑り込んで行った。

車内

金沢八景駅へ向けてラストスパート

 新杉田駅から乗り通せば26分。昼間でも7~8分毎に電車が走っているので気軽に乗り降り出来て利用しやすい。シーサイドラインにふさわしいのは市大医学部~金沢八景間に限られるけれど、八景島シーパラダイスをはじめ散策スポットには事欠かない。車両もクロスシートあり、前面展望席ありと楽しめるので、首都圏のちょっとしたお出かけにおすすめの路線である。

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