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東急の有料座席指定車両Qシートに乗車

1両だけ設けられる特別車両、その乗り心地は?

 2018年は、首都圏の私鉄において有料座席指定列車が相次いで導入された記念すべき年だった。既に運行実績を積み重ねていた東武東上線TJライナー、西武を中心とするSトレインに加え、京王ライナー、西武の拝島ライナー、そして東急大井町線&田園都市線にQシートが登場した。首都圏私鉄では、ほぼ出尽くし、これで一段落の感がある。
 最後に登場した東急のQシートは、他社の列車とは異なり、座席指定専用列車ではない。通常の列車に1両だけ特別車両が組み込まれたもので、関西の京阪で導入されているプレミアムカーやJR東日本の二階建てグリーン車に近い発想である。デビューして半年以上経ち、落ちついてきたと思われるので、通常の様子を取材してみた。
 

夜の大井町駅

 まずは、指定券。これは乗車当日の朝早くから発売開始となる。始発の大井町駅まで買いに行くのは面倒なので、チケットレスサービスを利用。ネットで無料の登録を行い、タブレットで購入した。好みの座席を選べるのは有難い。ドアすぐ後ろの窓のないハズレ席は避け、窓側席をゲットした。朝の購入時は、まだガラガラであったが、乗車間際の購入が多いようで、乗ってみるとほぼ満席であった。

Qシートの広告

チケットレスの画面

 大井町駅の発車時間は19時32分、すでに夜の帳は降り、ホームは帰宅を急ぐ通勤通学客でごったがえしていた。Qシート車両は田園都市線直通の急行長津田行き7両編成中の3号車。到着までしばらく時間があったので、Qシート利用者のウエイティングエリアで待つことになった。ウエイティングエリアはこちらという矢印に従って進んだのだが、何のことはないホーム上にオレンジ色で仕切られたスペースに過ぎなかった。指定料金を払っているのだから、専用の待合室とはいかなくても、ベンチくらい造ってもいいのにと思う。ともあれ、そこに係員が立っていて指定券のチェックを行った人から順番に並ぶように指示された。見ていると係員にスマホ画面を提示する人が多い。Qシート利用者に関しては、もはや紙の切符を買うのは少数派なのかもしれない。

Qシート利用者用ウェイティングエリア

Qシート車両のドア

 折返し急行長津田行きとなる電車が到着した。何とQシート車両から下りてくる人が何人もいる。車内は、すでにクロスシートに転換され、後ろ向きで走ってきたのだ。車両の構造上、座席の向きは手動で変えられるけれど、わざわざ進行方向にセットする人はいないようだ。この大井町行きの電車は、特別料金不要でQシートに堂々と座れるので、乗り得列車であろう。

Qシート車両の車内

 係員が車内の点検を済ませたところで乗車可となり、待望の車内へ。すでに座席は決まっているので我先にと慌てて乗る人はいない。乗車率は7割ほどであろうか。私の隣は空席のまま発車した。座席では、ドリンクホルダーとコンセントが利用できるようになっている。Sトレインは、ドリンクホルダーはあるもののコンセントは窓下にひとつあるだけ、京王ライナーは、コンセントはひとり一個利用できるものの、ドリンクホルダーはなし。それに比べると、Qシートは進化している。これでテーブルがあればいいのに。それとトイレはない。このあたりがクロスシートにもロングシートにもなるデュアルシート車両の限界で、ロマンスカーのような特急専用車両との差であろう。

ドリンクホルダーとコンセント

 電車は大井町線を西へ進み、まずは旗の台に停車。池上線からの客が乗って来るかと思ったら、誰も乗って来なかった。車内へ入ってみて普通の電車と雰囲気が異なるので降りて行った人が3人ほどいた。Sトレインではドアは一ヶ所しか開かないのに、Qシート車両ではすべてのドアを開けている。誤乗を防ぐ意味でも改善したほうがよいポイントだ。
 大岡山では同じホームの反対側に停まっていた目黒線の日吉行き電車と同時発車。やがて向うは高度を下げ、離れて行った。
 自由が丘ではかなりの乗車があった。私の隣にもビジネスマン風の人が腰をおろし、これで車内はほぼ満席となった模様だ。
 始発の大井町駅から乗るのであれば、1本電車を待てば座れる確率は高いけれど、自由が丘駅あたりだと座れる確率はゼロに近い。旗の台、大岡山、自由が丘からQシートを利用する価値は高そうだ。外は闇の中だけれど、ネオンきらめく商業ビルや明るいビルやマンションなど都会の夜の車窓はそれなりの魅力がある。電車は住宅街に差し掛かり、掘割の中を走ったりして二子玉川に到着。ここで田園都市線に合流する。
 二子玉川では下車のみ可能で乗車はできない。二子玉川から乗車できれば渋谷から田園都市線に乗ってきた人には便利だろうが敢えてそれを認めない。それは田園都市線渋谷駅あたりの大混雑を何としても減らそうとする東急の強い意志を感じさせる。Qシートを利用したければ、東横線で自由が丘に出るか、都心から南北線、目黒線経由で大岡山に出る。あるいはJRで大井町に出る。いずれにせよ迂回経路を魅力的なものにすることにより、田園都市線渋谷駅付近の飽和状態を解消するための方策がQシートなのだ。
 二子玉川からは複々線の真ん中を走る大井町線の線路ではなく、いちばん東側の田園都市線の線路に転線して進む。二子新地、高津はホームのある線路を通過するけれど、ホームドアがあるので安全上の心配はない。
 溝の口でも下車のみ。ドアのところにはQシート車両専用の車掌とホームの係員総出で乗車しようとする人をブロックしていた。丁寧な口調で「乗車はできません」を連呼。やはり、開くドアは1ヶ所に絞った方がスマートでトラブル回避にもつながると思われる。

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