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8年ぶりの復活、三陸鉄道釜石~宮古間初乗車

三陸鉄道リアス線開通から2カ月、フィーバーの余韻なお

 2019年3月23日、東日本大震災以来不通になっていたJR山田線の宮古~釜石間が8年振りに復旧、同時に三陸鉄道に移管され、記念列車が運行された。そして、三陸鉄道リアス線の一部区間として24日から営業を開始した。すぐにでも乗りに行きたかったのだが、開業フィーバーの大混雑を避けたかったのと、諸般の事情から延び延びになり、ようやく5月下旬に訪問することができた。当初の混雑は解消し、静かになったかと思いきや、相変わらずの団体ツアーや海外からの旅行客も散見し、三陸鉄道にとっては嬉しい話なのではないだろうか。

 東京からの列車の乗り継ぎの利便性などを考えて、今回は釜石駅から乗車することにした。釜石駅には、JRの2本あるホームとはやや離れたところに三陸鉄道専用のホームがある。南リアス線時代には、このホームから盛行きが発着していたのだが、線路配置の都合から宮古方面へは直通できない。したがって、新規開業区間を走る三陸鉄道の列車はJRのホームである4番線と時には3番線を間借りしての発着となっている。

祝開通のヘッドマークを付けた列車。釜石駅

 さて、4番線に到着した三陸鉄道の宮古行きは2両編成で、祝三陸鉄道リアス線開通のヘッドマークを誇らしげに掲げていた。先頭の車両はかなり混雑していたけれど、2両目はガラガラだったので、海側のクロスシートに座ることができた。発車間際には、かなり席が埋まり、私の向かいにも通路側に一人腰かけた。

釜石線(左)と分岐する

 発車すると、右手にSL銀河用の車庫やターンテーブルが見える。JR釜石線と並んで大渡川を跨ぐ。釜石線はSL銀河の取材で何回も乗っているけれど、いつも車窓から列車が走ることのない山田線の隣の線路を残念な気持ちで眺めていた。今、その線路を走っていると思うと感慨深いものがある。
 列車は、さっそく山深いエリアに差し掛かり、トンネルが連続する。両石湾が見えてきたあたりで、この先宮古を経て久慈まで並走する国道45号線が姿を現す。道路脇に「ここまで過去の津波浸水区間」という標識が目に入る。津波警報が発令された際の注意喚起ボードだ。嫌でも、あの時のことを思い出す。

鵜住居駅

 山を越えて、2つ目の駅鵜住居(うのすまい)に到着。鵜住居といえば、数年前に訪れた宝来館という浜辺の宿のことが頭をよぎる。津波にのまれながらも九死に一生を得た女将の話は実体験だけに忘れられない生々しさがあった。その女将が中心となって誘致したラグビーワールドカップ釜石開催。その会場となる釜石鵜住居復興スタジアムが駅の少し奥に姿を見せていた。ホームにある待合室の外壁には「トライステーション」の文字とともに地元中学生の手になるカラフルなイラストが描かれ、ラグビーワールドカップを盛り上げようとしている。2019年秋の大会は国内の12都市が会場となり、釜石で開催される試合は2試合のみだが、鵜住居周辺は大いに来訪者で賑わうことだろう。

ひょうたんの形をした大槌駅

ひょうたん島のキャラクターのひとりドンガバチョ

 トンネルを抜けると大槌駅だ。大槌町も震災とそれによる津波と火災で甚大な被害に見舞われ、町長をはじめ多くの犠牲者が出た。駅舎や構内も流失したので、すべて新しくなり、ひょうたんの形をしたユニークな駅舎が完成した。これは、大槌湾に浮かぶ蓬莱島がNHKで半世紀前に放送された人形劇「ひょっこりひょうたん島」のモデルと言われているためだ。それにあやかって駅舎の内外には、「ひょうたん島」に登場した人気キャラクターの人形が多数置かれていて楽しい気分を味わうことができる。駅舎内にあるレストランで提供される新巻鮭ラーメンとともに大槌の新たな観光資源となっている。

大槌駅に到着したカラフルなディーゼルカー

吉里吉里駅

 さらに山をトンネルで抜けると吉里吉里駅だ。井上ひさしの小説「吉里吉里人」と同じ名前なので一時有名になった場所である。小説の舞台は一ノ関あたりらしいから、ゆかりの地とするには少々無理がある。それとは関係ないけれど、海岸線がきれいとのことなので、途中下車して片道10分あまり歩いて海を見てきた。道路から見下ろすときれいな砂浜が広がっている。歩くとキリキリと音が出る「鳴き砂」に由来する地名とのことだ。夏になると海水浴客で賑わうことだろう。

吉里吉里海岸

 吉里吉里駅を出てしばらくすると、浪板海岸が見えてくる。片寄せ波で知られる砂浜だったが、震災後形が変わってしまったとのこと。近くにあるホテルの送迎車が列車から降りた人たちを浪板海岸駅まで迎えにきていた。このあたりの車窓から眺める海岸線は美しい。元々は第二次大戦前に開通した路線なので、1980年前後に完成した北リアス線や南リアス線のようなトンネルと橋梁の多い高規格路線と異なり、カーブが多く、地形に忠実に走っている。それゆえ、車窓が存分に楽しめる区間なのだ。

本州最東端に位置する岩手船越駅

 列車は、北北東方向に進み岩手船越駅へ。本州最東端の駅と記されている。周囲は集落で、やや離れたところにある鯨と海の科学館以外は、取り立てて目につくものはなさそうだ。さらに走ると再び海が現われ、織笠駅に停まると、次は陸中山田駅である。元来の山田線は、ここを通るからこその命名である。駅舎も立派そうなので、敬意を表して途中下車してみた。

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