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伊賀から伊勢へ⑦松坂城(参)

季節と時節でつづる戦国おりおり第389回

次の写真は、こちら。

 

 松坂城の大手口から東、市役所前あたりに建てられた「大手門跡」の碑です。現在の松坂城跡はかつての遺構が二の丸の入り口から奥にしか残っていませんが、往時はこの大手門跡を南北に堀が走り、石垣で囲まれた食い違いの虎口に四つ足(四本の柱で建つ)の大手門が踏ん張っていました。

 中に入ると、大きい武家屋敷が城のまわりを取り囲み、そこを過ぎてようやく二の丸にたどり着いたのです。

 現在の、この大手門跡から東、伊勢街道方面を眺めましょう。

 

 道路が少し湾曲しているのがわかります。

 これは、道路整備によってなだらかなS字になっていますが、伊勢街道と大手門の間にあったクランクの跡です。ただ、クランクとはいっても幅の広い大手道にこの一ヶ所だけ。これに対し、伊勢街道は城下に入ると何カ所にもクランクがありました(こちらも道路整備によってかすかな痕跡を残すのみ)。

 これは、氏郷が城の防御よりも城下町の経済振興に力を入れていた証拠と言えるでしょう。

 伊勢街道をクランクで幾段にも区切れば通行する旅人は行く手の長さを意識せずそれぞれの区切りでゆっくりと商店の品に集中して吟味し、お金を落とすことになるのです。「映画館効果」というやつですね。

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橋場 日月

はしば あきら

はしば・あきら/大阪府出身。古文書などの史料を駆使した独自のアプローチで、新たな史観を浮き彫りにする研究家兼作家。主な著作に『新説桶狭間合戦』(学研)、『地形で読み解く「真田三代」最強の秘密』(朝日新書)、『大判ビジュアル図解 大迫力!写真と絵でわかる日本史』(西東社)など。


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