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なぜ日本の里親委託率はOECD諸国で最低なのか?

虐待や育児放棄に苦しむ現代の子どもたちと「特別親子縁組」という選択肢

■虐待や育児放棄に苦しむ現代の子どもたち

 

 いま、子育てに関わるふたつの問題に、かつてないほど関心が集まっています。

 ひとつめの問題は「少子化」です。その対策の必要性は多くの人が認識しているところでしょう。これからの社会と経済を支えていくためにも、生まれてくる子どもをいかに増やすか、考えることが大切なのはいうまでもありません。

 しかし、子どもの数がただ増えればいい、というわけではありません。生まれたその時から、子どもの人生が始まります。かけがえのない命が適切に、そして健やかに育っていくことのできる環境を十分に整えることもまた大切です。

 それこそが、もうひとつの問題です。

 近年、ニュースなどで「虐待」や「親のネグレクト(育児放棄)」の話題を目にすることが増えており、社会問題として大きな注目を集めています。

 これらの原因としては、親の無責任さや国の政策の遅れが論じられがちです。しかし実際は、そんなに単純な話ではありません。長年この問題に向き合ってきた私たちの目には、現状は「親も国もともに、問題解決に向けて努力をしている。しかし子どもにとって十分ではない」という状態に映ります。

 まだ幼く、右も左も分からない子どもたちにとって、十分に時間と愛情を注いで育ててあげることがどれだけ大切なことか、子育て経験のある方はもちろん実感されているでしょうし、そうでない方でも想像がつくことと思います。

 虐待やネグレクトなどの状況から保護を必要とする子どもの数は、国内で約4万5000人にものぼるとされています。

■実親との関係を解消する「特別親子縁組」という選択肢

 私は、「全国おやこ福祉支援センター」というNPO法人を2019年3月まで運営し、「特別養子縁組」のサポートを行ってきました。特別養子縁組とは、子どもの利益と福祉を目的とした国の制度です。縁組成立によって実親との親子関係を解消し、養親に委託することができるため、虐待やネグレクトのようなケースにおいては非常に有効な手段として活用することができます。なお私とユーチューバーであるえらいてんちょうさんの新刊『インターネット赤ちゃんポストが日本を救う』(KKベストセラーズ刊)では、これまでのキャリアを踏まえて実親、養親、児童養護施設などさまざまな視点から、特別養子縁組のメリットについて考察しています。

 養子縁組は欧米では一般的な制度として浸透していますが、日本ではまだまだ十分とは言えない状況です。里親への委託としては、戸籍上の親子関係を結ばない「養育里親」という制度も存在しますが、特別養子縁組と同様に国内では認知度が低く、成立件数はOECD諸国で最少です。

 本来子どものために作られた制度が、なぜこれほどまでに活用されていないのか? その点について、今回はさまざまな側面から検証してみたいと思います。

KEYWORDS:

『インターネット赤ちゃんポストが日本を救う』

著者:阪口 源太(著)えらいてんちょう(著)にしかわたく(イラスト)

 

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親の虐待や育児放棄を理由に国で擁護している約4万5000人の児童のうち、現在約7割が児童養護施設で暮らしています。国連の指針によると児童の成育には家庭が不可欠であり、欧米では児童養護施設への入所よりも養子縁組が主流を占めています。

本書ではNPOとしてインターネット赤ちゃんポストを運営し、子どもの幸せを第一に考えた養子縁組を支援してきた著者が国の制度である特別養子縁組を解説。実親との親子関係を解消し、養親の元で新たな成育環境を獲得することができる特別養子縁組の有効性を、マンガと文章のミックスで検証していきます。

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阪口 源太

さかぐち げんた

NPO法人全国おやこ福祉支援センター代表理事

1976年福井県生まれ。NPO法人全国おやこ福祉支援センター代表理事。自ら創業したIT会社を売却後、東日本大震災をきっかけに社会起業家に転身し、NPOを設立。大阪を拠点として、特別養子縁組のサポートに携わる。著書に「産んでくれたら200万円 -特別養子縁組の真実-」(Kindle版)がある。


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インターネット赤ちゃんポストが日本を救う
  • 阪口 源太
  • 2019.08.02