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徳川家康が実践した戦国一の食養生

戦国武将は皆長生きだった!【和食の科学史⑩】

■豆味噌で大豆を丸ごといただく

 尾張、三河の武将たちにとっては、味噌といえば豆味噌、いわゆる八丁味噌でした。黒に近い焦げ茶色の味噌で、これを味噌汁はもちろん、味噌煮、味噌漬けなど調味料としても使い、日常的に食べていました。八丁味噌の「八丁」は三河にあった地名です。

 豆味噌が他の味噌と根本的に違うのは、大豆と塩だけで作ることです。たとえば、信玄の信州味噌や政宗の仙台味噌は大豆、塩、そして米を使うことから米味噌と呼ばれています。この他に九州と、中国四国の一部では、大豆、塩に加えて麦を使う麦味噌が食べられています。

 連載第7回で書いたように、味噌のルーツは醤で、ここから味噌と醤油が日本で独自に発展しました。当初の原料は大豆と塩でしたが、研究を重ねるなかで、大豆の発酵を早めるために米麹や麦麹を加えたり、大豆を蒸す代わりにゆでたりするなどの工夫がなされ、さまざまな味噌が作られました。

 

 それにもかかわらず、尾張、三河の周辺だけが一貫して古い製法を守ってきたのは、この地域特有の蒸し暑い夏にも腐敗せず、風味が保たれるからといわれています。

 コクがあり、見た目が黒々としているので、塩辛いのではないかと心配する人がいますが、独特の風味は大豆の蛋白質が発酵してできた、うまみ成分によるものです。穀物を使っていないぶん、炭水化物が少ない代わりに大豆由来の成分が豊富で、カルシウムが多く、血圧を下げる働きのあるカリウムが非常に多いのも特徴です。

 豆味噌に限らず、どこの味噌にも健康効果はあります。大切なのは、味噌も人の体も、その土地の気候風土のなかで作られるということです。その意味で、自分が生まれ育った土地の味噌こそ、体にもっとも合うといえるでしょう。

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奥田 昌子

内科医、著述家

京都大学大学院医学研究科修了。内科医。京都大学博士(医学)。愛知県出身。博士課程にて基礎研究に従事。生命とは何か、健康とは何かを考えるなかで予防医学の理念にひかれ、健診ならびに人間ドック実施機関で20万人以上の診察にあたる。人間ドック認定医。著書に『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』(講談社)、『内臓脂肪を最速で落とす』(幻冬舎)、『実はこんなに間違っていた! 日本人の健康法』(大和書房)などがある。


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