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コロコロ変わる。もう大人の都合で入試制度を変えるのは止めにしないか。

キーワードで振り返る平成30年史 第22回

■受験という通過儀礼

 

 大学受験のシーズンが今年もやってきた。年齢、特に若さを重んじる日本の社会において、人生の方向性が大きく変えられる機会は二度。ひとつが就職、そしてもうひとつが大学受験。今年も多くの若者たちがこの通過儀礼に挑む。

 とは言っても、実は大学進学を志望する高3生のうち、実はこれから受験に臨むのはその半数強でしかない。入試制度が多様化し、大学合格者の4割が推薦入試やAO入試で合格を決めてしまうようになったからだ。つまりこの春から大学に進学する高3生と高卒生のうち、4割は受験を終えてしまっているということになる。残った一般入試組、俗にいう実力組は、推薦入試やAO入試で削られた残りの一般枠を競うことになる。

 もちろん推薦入試に合格するには日頃の態度や姿勢、いわゆるコミュ力が必要であるし、AO入試を突破するには一般入試とは別の技量を要される。しかしそれを考慮しても、一般入試組が相当厳しいのは自明の理。受験自体もさることながら、親元を離れる場合は部屋選びや引っ越しなども、推薦組やAO組に出遅れる形になる。もっともその分、基礎学力は間違いなく保証されるはずなのだが、就職にあたってどんな形式の入試で合格したかを問われることはあまりない。自分で選んだ道ではあるが、狭き門より入ることを選択して、戦っている一般受験生に敬意を評したい。(公募推薦の場合、まだ入試を終えていないケースもある)

 ところでなぜこんなことになったのだろうか。推薦入試自体は昭和の頃から存在した。

 もっとも当時は系列校からの内部進学や指定校推薦が主流。合格者全体に対する推薦合格者の比率も決して高くはなかったのだが。

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後藤 武士

ごとう たけし

平成研究家、エッセイスト。1967年岐阜県生まれ。135万部突破のロングセラー『読むだけですっきりわかる日本史』(宝島社文庫)ほか、教養・教育に関する著書多数。


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