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コロコロ変わる。もう大人の都合で入試制度を変えるのは止めにしないか。

キーワードで振り返る平成30年史 第22回

■AO入試の導入

 しかし社会の趨勢がそれを受け入れた以上、大学もまた同調する。こうして詰め込み教育の否定の口実で学力テスト免除の入試が登場し、個性の重視の観点から一芸入試なるAO入試が導入される。当初この動きが見られたのは私学だけだったが、ついには国公立もこの流れに同調。平成12年度にはAO入試を導入した。現在は国立大学で定員の15%、公立大学で25%を超える生徒が、このAO入試で入学している。

 入試制度も多様化した。その大きなきっかけとなったのが、平成2年の大学入試センター試験の導入である。それまでの共通一次試験に代わって、文部省直轄の大学入試センターが問題を作成。国公立のみならず私立大にも門戸を開放し採用を促した。受験生には難問奇問の類から開放され、体力的にも経済的にも負担の大きい複数会場での複数受験をある程度避けられるというメリットが生じた。私立大も入試業務の手間を省いて良質な学生が確保できるメリットがあった。こうして徐々に私学もセンター試験を受験に導入し始め、現在では私立大の9割が何らかの形でセンター試験を利用するに至っている。かつての共通一次試験が国公立志望者だけが受験するものだったのに比すれば、隔世の感がある。

 とは言え、センター試験は基礎的な問題が主。(とは言っても世間で言われるほど易しくはないのだが)校風やレベルを入試問題に反映したい私学は独自入試も継続する。こうして受験制度はどんどん多様化。センター利用の場合でも複数科目の合計点を基準とするものもあれば、特定の科目だけの点数で判断するものもあり、さらには英検などの外部試験の点数を特定の換算率で代用するシステムまで出てくる始末。独自入試も全学部が同じ問題に挑む全学部統一形式がある一方で各学部独自の問題を解く学部別入試も存在し、同じ大学の同じ学部学科だけでも何通りもの受験形式が混在することに。受験生は混乱を避
けることはできないが、一方で複数の機会を与えられるメリットは大きい。他方、大学サイドにしてみれば複数の受験システムごとに受験料を得られるのだから、これまた経営的にも助かる。かくして指定校推薦、公募推薦、AO、様々な一般入試と、それこそ詰め込むのはもちろん把握が不可能なほど大学受験は多様化した。

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後藤 武士

ごとう たけし

平成研究家、エッセイスト。1967年岐阜県生まれ。135万部突破のロングセラー『読むだけですっきりわかる日本史』(宝島社文庫)ほか、教養・教育に関する著書多数。


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