UNDP人間開発報告書最新版発表:人間開発の進歩は35年ぶりの低水準に
60%の人々はAIによる新たな雇用機会の創出に期待

Photo: UNDP
ブリュッセル発 - 国連開発計画(UNDP)がきょう発表した新たな報告書によると、人間開発の進歩はかつてない減速を強いられています。報告書はまた、人工知能(AI)がいかにして開発を再活性化させる起爆剤になりうるかも示しています。
報告書は、2020年から2021年にかけて生じたコロナ禍という例外的な危機が過ぎ去ってもなお、回復が持続するどころか、期待に反してわずかな進歩しか見られないことを明らかにしています。この危機下の2年間を除くと、今年の報告書で予測される人間開発の改善は、1990年以来の小幅なものにとどまっているからです。
人間開発報告書2025年度版は「選択の問題:人工知能(AI)時代における人間と可能性」と題して、人間開発指数(HDI)全体に照らして、開発の進捗状況を分析しています。HDIは、所得水準とともに、健康と教育の成果達成度も盛り込んだ一連の指標です。2024年の予測を見ると、全世界のあらゆる地域でHDIの改善に停滞が生じていることが分かります。
全世界での開発の減速に警鐘を鳴らす傍ら、報告書は豊かな国と貧しい国との間の不平等が拡大しているという調査結果も明らかにしています。グローバルな圧力によって従来の開発経路が閉ざされつつある中で、世界を長期的な停滞の道へと向かわせないようにするには、断固としたアクションが必要です。
アヒム・シュタイナーUNDP総裁は「私たちには何十年にもわたり、2030年までに極めて高水準の人間開発を達成できる道のりを進んできましたが、今回の減速は、グローバルな進歩が極めて現実的な脅威にさらされていることを示唆しています。2024年に見られた人間開発の停滞が『ニュー・ノーマル(新しい常態)』になってしまえば、2030年に実現すべき目標の達成は数十年も遠のき、それによって私たちの世界では不安と分断が広がり、経済的、生態学的ショックに対する脆弱性も高まることになりかねません」と述べています。
報告書によると、HDI低位国グループと最高位国グループとの間の格差は4年連続で拡大しました。これによって、豊かな国と貧しい国との間の不平等縮小という長期的なトレンドは逆転していることが分かります。
HDI低位国グループが抱える開発課題は、貿易紛争の激化、債務危機の悪化、そして雇用を伴わない産業化の広がりによって、特に厳しいものとなっています。
シュタイナーUNDP総裁は「この全世界的混乱の中で、開発を推進する新たな方法の模索が急務になっている」と強調、以下のように語ります。「AIが私たちの生活の非常に多くの側面で急速に進歩し続けていることから、私たちはこれを開発に活用できる可能性を検討すべきです。新たな能力はほぼ日常的に生まれており、AIが万能薬ではないにせよ、私たちの選択によっては、人間開発を再び活性化させ、新たな経路と可能性を開くこともできるでしょう」
報告書では、人々が現実的ながらも、AIがもたらす可能性のある変化に期待していることを示す新たな調査結果も紹介しています。
全世界の回答者の半数は、自分たちの仕事が自動化される可能性があると考えています。しかし、それより多い10人に6人は、AIが自分たちの雇用にとってプラスに働き、現時点で存在しないような雇用の機会が生まれることを期待しています。
AIによって雇用が失われるおそれがあるとしたのは、回答者の13%にすぎません。対照的に、HDI低・中位グループの国々では、70%の回答者がAIによって自分たちの生産性が高まるとしているほか、AIが来年中にも教育や保健医療、仕事で活用されるようになると見る回答者も3分の2に達しています。
報告書はAIについて人間中心のアプローチの採用を提唱していますが、これによって開発へのアプローチも根本的に見直される可能性があります。調査結果は、全世界の人々がこのような「リセット」に期待していることも示しています。
報告書では、アクションが必要な重要分野を3つ提示しています。
- 人間がAIと競争するのではなく、これと協業できる経済を構築すること
- 設計から実装に至るまで、AIのライフサイクル全体に人間の行為主体性を埋め込むこと
- 21世紀の要請に見合うよう、教育と保健医療システムの現代化を図ること
AIの民主化はすでに始まっています。調査回答者の5人に1人は、すでにAIを活用していると答えています。また、人間開発低・中位グループ国では、来年中に教育や保健医療、仕事でAIの活用を予測する回答者が3分の2に上ります。よって、新たに生まれつつある機会から誰ひとり排除されないようにするためにも、電力とインターネットの格差解消はこれまでよりさらに急務になっていると言えます。しかし、アクセスを確保するだけでは不十分です。真の格差解消は、AIが人間の行動をどれだけ効果的に補完、拡張できるかにかかっているからです。
ペドロ・コンセイソンUNDP人間開発報告書室長は「私たちが今後数年で行う選択は、この技術的移行が人間開発にどのような影響を残すかを決定づけることになるでしょう。適切な政策で人間を主役とすれば、AIは新たな知識や能力、発想の習得にとって重要な橋渡し役となり、農民から零細企業経営者に至るまで、あらゆる人のエンパワーメントを可能にすることでしょう」と語っています。
人間開発報告書2025年版の全文は、https://hdr.undp.org/content/human-development-report-2025 をご覧ください。
国連開発計画とは
UNDPは貧困や格差、気候変動といった不正に終止符を打つために闘う国連の主要機関です。170か国において、人間と地球のために総合的かつ恒久的な解決策を構築すべく、様々な専門家や連携機関からなる幅広いネットワークを通じ支援を行っています。
企業プレスリリース詳細へ
PR TIMESトップへ

Photo: UNDP
ブリュッセル発 - 国連開発計画(UNDP)がきょう発表した新たな報告書によると、人間開発の進歩はかつてない減速を強いられています。報告書はまた、人工知能(AI)がいかにして開発を再活性化させる起爆剤になりうるかも示しています。
報告書は、2020年から2021年にかけて生じたコロナ禍という例外的な危機が過ぎ去ってもなお、回復が持続するどころか、期待に反してわずかな進歩しか見られないことを明らかにしています。この危機下の2年間を除くと、今年の報告書で予測される人間開発の改善は、1990年以来の小幅なものにとどまっているからです。
人間開発報告書2025年度版は「選択の問題:人工知能(AI)時代における人間と可能性」と題して、人間開発指数(HDI)全体に照らして、開発の進捗状況を分析しています。HDIは、所得水準とともに、健康と教育の成果達成度も盛り込んだ一連の指標です。2024年の予測を見ると、全世界のあらゆる地域でHDIの改善に停滞が生じていることが分かります。
全世界での開発の減速に警鐘を鳴らす傍ら、報告書は豊かな国と貧しい国との間の不平等が拡大しているという調査結果も明らかにしています。グローバルな圧力によって従来の開発経路が閉ざされつつある中で、世界を長期的な停滞の道へと向かわせないようにするには、断固としたアクションが必要です。
アヒム・シュタイナーUNDP総裁は「私たちには何十年にもわたり、2030年までに極めて高水準の人間開発を達成できる道のりを進んできましたが、今回の減速は、グローバルな進歩が極めて現実的な脅威にさらされていることを示唆しています。2024年に見られた人間開発の停滞が『ニュー・ノーマル(新しい常態)』になってしまえば、2030年に実現すべき目標の達成は数十年も遠のき、それによって私たちの世界では不安と分断が広がり、経済的、生態学的ショックに対する脆弱性も高まることになりかねません」と述べています。
報告書によると、HDI低位国グループと最高位国グループとの間の格差は4年連続で拡大しました。これによって、豊かな国と貧しい国との間の不平等縮小という長期的なトレンドは逆転していることが分かります。
HDI低位国グループが抱える開発課題は、貿易紛争の激化、債務危機の悪化、そして雇用を伴わない産業化の広がりによって、特に厳しいものとなっています。
シュタイナーUNDP総裁は「この全世界的混乱の中で、開発を推進する新たな方法の模索が急務になっている」と強調、以下のように語ります。「AIが私たちの生活の非常に多くの側面で急速に進歩し続けていることから、私たちはこれを開発に活用できる可能性を検討すべきです。新たな能力はほぼ日常的に生まれており、AIが万能薬ではないにせよ、私たちの選択によっては、人間開発を再び活性化させ、新たな経路と可能性を開くこともできるでしょう」
報告書では、人々が現実的ながらも、AIがもたらす可能性のある変化に期待していることを示す新たな調査結果も紹介しています。
全世界の回答者の半数は、自分たちの仕事が自動化される可能性があると考えています。しかし、それより多い10人に6人は、AIが自分たちの雇用にとってプラスに働き、現時点で存在しないような雇用の機会が生まれることを期待しています。
AIによって雇用が失われるおそれがあるとしたのは、回答者の13%にすぎません。対照的に、HDI低・中位グループの国々では、70%の回答者がAIによって自分たちの生産性が高まるとしているほか、AIが来年中にも教育や保健医療、仕事で活用されるようになると見る回答者も3分の2に達しています。
報告書はAIについて人間中心のアプローチの採用を提唱していますが、これによって開発へのアプローチも根本的に見直される可能性があります。調査結果は、全世界の人々がこのような「リセット」に期待していることも示しています。
報告書では、アクションが必要な重要分野を3つ提示しています。
- 人間がAIと競争するのではなく、これと協業できる経済を構築すること
- 設計から実装に至るまで、AIのライフサイクル全体に人間の行為主体性を埋め込むこと
- 21世紀の要請に見合うよう、教育と保健医療システムの現代化を図ること
AIの民主化はすでに始まっています。調査回答者の5人に1人は、すでにAIを活用していると答えています。また、人間開発低・中位グループ国では、来年中に教育や保健医療、仕事でAIの活用を予測する回答者が3分の2に上ります。よって、新たに生まれつつある機会から誰ひとり排除されないようにするためにも、電力とインターネットの格差解消はこれまでよりさらに急務になっていると言えます。しかし、アクセスを確保するだけでは不十分です。真の格差解消は、AIが人間の行動をどれだけ効果的に補完、拡張できるかにかかっているからです。
ペドロ・コンセイソンUNDP人間開発報告書室長は「私たちが今後数年で行う選択は、この技術的移行が人間開発にどのような影響を残すかを決定づけることになるでしょう。適切な政策で人間を主役とすれば、AIは新たな知識や能力、発想の習得にとって重要な橋渡し役となり、農民から零細企業経営者に至るまで、あらゆる人のエンパワーメントを可能にすることでしょう」と語っています。
人間開発報告書2025年版の全文は、https://hdr.undp.org/content/human-development-report-2025 をご覧ください。
国連開発計画とは
UNDPは貧困や格差、気候変動といった不正に終止符を打つために闘う国連の主要機関です。170か国において、人間と地球のために総合的かつ恒久的な解決策を構築すべく、様々な専門家や連携機関からなる幅広いネットワークを通じ支援を行っています。
企業プレスリリース詳細へ
PR TIMESトップへ