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「小粒ながらピリリと辛いハードパンチャー」ヘッツアーとは?

駆逐戦車、突撃砲、自走砲~機甲戦を支えた「戦車殺し」の強力な助っ人たち②

■軽駆逐戦車ヘッツアー

正面から捉えられた走行中のヘッツアー。隣のサイドカーと比べると、本車がいかにコンパクトにまとまっているかがよくわかる。

 ・・・・ヘッツアー4両を装備する第731駆逐戦車大隊第3中隊の正面に、IS-2スターリン重戦車を先頭に立てたソ連の歩戦合同部隊が突っ込んできた。

 いかに避弾経始に優れているとはいえ弱装甲のヘッツアーは、スターリンの122mm戦車砲弾を食らえばひとたまりもない。だがソ連戦車兵は、車高が低くしかも巧妙に偽装されたヘッツアーを捕捉できず、その強力な砲をやみくもに発射するだけだった。おまけに、砲弾と薬莢を合体後に装填しなければならない分離装弾式の122mm砲は発射速度が遅い。

 これらの事実を一瞬で見切った第3中隊長は、1両のヘッツアーに隠蔽されたルートをたどってスターリンの側面に回り込むよう指示。目立たぬようゆっくりと側面に達した同車は、前進を続けるスターリンが真横を通過した瞬間、48口径7.5cm砲を叩き込んだ。

 1発、2発、3発。スターリンの車体や砲塔の側面に7.5cm徹甲弾が当たるたびに、命中個所から閃光が閃く。だが重装甲を誇るスターリンだけのことはあり、側面といえども48口径7.5cm砲での撃破は容易ではなかった。

 しかし6発目が命中したところで、さすがのスターリンも爆発炎上。

「奴らを逃がすな!」

 防御陣地に伏せていた歩兵の分隊長が叫ぶ。

 燃え盛る車内から脱出を試みた数名のソ連戦車兵は、ハッチを出るか出ないかのうちにドイツ歩兵によって速やかに射殺された。

 
次のページ約2時間の戦闘で、第3中隊は…

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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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