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「小粒ながらピリリと辛いハードパンチャー」ヘッツアーとは?

駆逐戦車、突撃砲、自走砲~機甲戦を支えた「戦車殺し」の強力な助っ人たち②

 

 このあとの約2時間の戦闘で、第3中隊はさらにT-34中戦車1両、76.2mm砲1門、迫撃砲3門などを撃破しソ連歩兵多数を殺傷。任務を達成したのだった・・・・

 駆逐戦車は、実質的に突撃砲とほとんど変わらない。唯一、砲兵科ではなく機甲科の装備車両であることが相違点といっても過言ではない。

 突撃砲と同じく、既存の戦車車台を利用し、旋回はしないが密閉されたカーゼマット式戦闘室を装備。そこに限定旋回で砲を搭載する。旋回砲塔ではないため同サイズの戦車よりも大口径の砲の搭載が可能なのも突撃砲と同様だ。そしてこの砲塔がないことが、構造の簡略化による生産性の向上というメリットも生んだ。

 ここで紹介したヘッツアーは、第二次大戦前にドイツが併合したチェコで生産されていた38(t)戦車の車台から誕生した軽駆逐戦車だ。避弾経始を重視した合理的な装甲を備えたコンパクトな車体に、IV号戦車と同系統の48口径7.5cm砲を搭載した「小粒ながらピリリと辛いハードパンチャー」である。本車がこのような車体に仕上げられたのは、それまでの突撃砲や駆逐戦車による戦訓が反映できたからだ。

 その外観と、ドイツ語で「勢子」を意味するヘッツアーの名称から、一部では機動力に優れると誤解されている面もあるようだが、実際には本車は獲物を追う「ハンター(狩人)」ではなく、獲物を待ち伏せる「トラッパー(罠猟師)」と言ったらわかりやすいかも知れない。

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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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