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「かまわぬ」「あさくさ」…江戸時代の判じ絵が面白い

絵文字進化論第1回【後編】

日本が生み出した文字文化「絵文字」は、日本人のみならず外国人をも虜にする。ロシア出身で、早稲田大学で「国字」を学んだシャルコ・アンナさんが絵文字の歴史と魅力、そこから見えてくる日本人独特のコミュニケーションの特性を、他言語との比較を交えて迫っていく。第1回【後編】。

前編:外国人が目を丸くした日本の「絵文字」の豊かさ

文字で遊ぶ・絵と文字を交ぜるという発想が判じ絵に

 みなさんが友達にメッセージアプリでメッセージを送る時、その文章は「絵」と「文字」が交ざり合っていませんか? このような「絵と文字を組み合わせる、言葉と絵で遊ぶという発想」は、実はデジタル時代よりずっと以前にもあったのです。

 日本が豊かな絵文字文化を生み出せた理由の一つとしてもこの「絵と文字で遊ぶ文化」があってのことだとよく言われています。

●「かまわぬ」

 こうした発想は、実際に江戸時代の判じ物などに表れています。図1の写真を見てみましょう。これは、鎌の絵に輪の絵、そして「ぬ」という文字からなっている有名な判じ物です。読めるでしょうか? 鎌(かま)+◯(わ)+「ぬ」で「かまわぬ」ですね。江戸時代、町奴の間で流行した衣服の模様から来ている判じ物で、「お構いなし」「構うものか」を表したしゃれだとされています。

 この「かまわぬ」は手拭のブランド名として親しまれてきました。外国人の観光客の間にも人気なお土産品です。

写真を拡大  図1 手拭のブランド名に残っている「かまわぬ」の判じ物 出典:筆者の友人が撮影
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シャルコ・アンナ

1988年生まれ。ロシア、シベリア地方出身。地元の大学で日本語を勉強し始めたことをきっかけに、日本の文字文化に魅了され、国費留学生として来日。2012年に早稲田大学の大学院に入学して、笹原宏之教授の元で日本語の文字・表記について研究を続けてきた。ポルトガル人と国際結婚して、1歳の息子を子育て中。現在はイギリスに在住。


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