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“話を聞いてもらいたい妻”と“問題解決をしてしまう夫”……夫婦のすれ違いは「脳」が原因だった

精神科医・水島広子先生に聞く、夫婦間コミュニケーションはなせうまくいかないのか

育児を通した夫婦関係について、「夫」目線で考える本特集「『イクメン』って結局なに?」。ここまで、夫婦それぞれが抱く不満の正体や、育児に対する問題意識の持ち方の違いなど、あらゆる面で夫婦間に「すれ違い」が見られた。そうしたすれ違いはなぜ起きるのだろうか?

■まずは、妻の話をじっくり聞くことから始めよう

 夫にとって妻が、妻にとって夫が、“一緒にいると心から安らぐ、なんでもわかってもらえる相手”というのは、もはや幻想なのかもしれない!? 一生を共に歩む覚悟と愛を持って一緒になったはずのパートナーだが、日々の多忙な暮らしの中で少しずつすれ違い、気がついたら相手の考えていることが全くわからなくなっている……なんて、実はよくある話。今回、書籍『対人関係療法で改善する夫婦・パートナー関係』(創元社)の著者である精神神経科医師の水島広子先生に、夫婦間のよくある問題とその解決方法についてお話を伺った。

 

「たくさんの夫婦面接を経験してきて思うことは、夫婦には一定のパターンがあるということです。よくある組み合わせは、“問題解決をしてしまう男性”と“話を聞いてもらいたいだけの女性”。これってかなり大きなズレを生みかねない。この考え方の違いで悩んでいらっしゃる方というのは、非常に多いのです」

 例えば育児にまつわる話。公園で他の子どもと一緒に遊んでいる我が子を見て、妻が「うちの子、こういうところが他の子と比べてちょっと遅いかしら」というようなことを家で夫に呟いたとする。すると夫は「じゃあ明日にでも病院に行って診断してもらったらいいよ」と、すぐ何らかの行動に移そうとしたがる。妻はそんな時、「エッ!?(そんなこと望んでいないのに……)」と引いてしまう、という展開。まるで我が家の話か、と思う人も多いのではないだろうか。

「女性は、ただ単に共感を求めて呟いているだけなので、夫に“そうかもしれないね”と言って聞いてもらえたら、それだけで安心するんです。ご近所で小さなトラブルが起きたときも、妻はその愚痴を聞いてもらいたいだけなのに、夫が乗り出していって問題がさらに大きくなってしまう、なんていうのも同じ理由。男性は“問題解決脳”なので、ただ話を聞く、ということが苦手な人が多いのです」

 妻が求めているのは、ただ話を聞いてくれる夫。問題を解決するために具体的な行動に移すかどうかは、あくまでその後の展開であり、ケースバイケースなのだ。となると、このすれ違いを緩和するためには、夫側が受け止め方を変えるべき、ということに尽きるのか。

「それができればとてもいいと思いますが、多くの夫婦を見ていて思うのは、男女ともにそう簡単に変わらないということです。“問題解決を急がなくていい、聞いてくれるだけでいいの”と妻の方から夫に言ったとしても、“じゃあ、なぜ喋るんだ?”となる。夫にとっては、問題解決しなくていいということそのものが理解できないのです。だから妻は、“聞いてもらうだけで気持ちが落ち着くから”と、ちゃんとその効果も含めて夫に伝えないといけないです」

 妻は愚痴を聞いてもらうだけで少しラクになれる。夫は例えば、趣味に没頭する時間を持つことでストレス発散をする。そのどちらも根本的な問題解決にはならないが、夫婦円満を目的とするなら、日々の出来事の問題解決と夫婦間コミュニケーションの問題は混同しないで分けて考えた方が得策。

「夫婦円満のためには、違う考え方を持つ二人がお互いに歩み寄って中間を探ることが大切です。例えば、“これ(趣味の活動など)をやらせてもらえれば、あとのことは妻に譲ってもいい”という男性は多いので、“これだけは譲れない”というポイントをお互いに挙げてみるのがいいかもしれません。例えば、妻から夫に対しては、“意見を挟まずに最後まで話を聞いてほしい”などというのも有効ですね。ただし、これはあくまで一つの傾向。男女逆のパターンもありえます」

次のページ言葉にせずとも気持ちを察するのが愛、は単なる幻想

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水島 広子

みずしま ひろこ

精神科医、対人関係療法専門クリニック院長。慶應義塾大学医学部卒業、同大学院修了。慶應義塾大学医学部精神神経科勤務を経て、二〇〇〇~〇五年衆議院議員を務め、児童虐待防止法の抜本的改正などに取り組む。著書に『トラウマの現実に向き合う』『女子の人間関係』など多数。


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  • 広子, 水島
  • 2011.12.22