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芥川賞作家がつくる「書店」。大入り満員を目指す工夫

福島県相馬市小高在住、柳美里さんのプロジェクト

■柳美里さんが描いた書店のかたち

本・雑誌搬入前の「フルハウス」。装いはどのように変わるのか……。

 作家・柳美里さんが4月9日に書店をオープンする。

 場所は、居住地となる福島県南相馬市。小高駅から徒歩3分にあるその書店は「フルハウス」と名付けられた。愛読者の方ならなじみが深いであろう、柳美里さんが初めて出した小説のタイトルである。

「名前のとおり、大入り満員にできたら」

 そう語る柳さん、このプロジェクトには構想から2年近い時間がかかっている。クラウドファンディングで出資を募り、実際の書店で研修として店頭に立ち、プレイベントの開催などを経てここまで漕ぎつけた。地元だけでなく多方面からさまざまな協力もあった。

「書店さんがこんなに大変で技術のいるものだとは想像しなかった。改めて書店さんを尊敬しました」(柳美里さん)

 苦心のすえに生まれる書店「フルハウス」には作家ならではのさまざまな工夫がある。

 

 たとえば「〇〇が選ぶ○○の20冊」というコーナー。旧知の作家仲間に頼み、テーマに合わせたお薦めの本を選書してもらった。俵万智さんには「ことばについて考える20冊」を、角田光代さんには「旅する20冊」、平田オリザさんには「演劇について考える20冊」など計24人。小山田浩子さんに頼んだのは「風邪で仕事(学校)を休んだ時に読む本」――どんな本が並べられているのか、仕事を休んででも書店をのぞいてみたくなる。

4月20日に刊行予定の選集のカバーにも「フルハウス」が。

 ほかにも毎週土曜日にはイベントを開催するなど、柳美里さんに加え、多様な著名人が小高に訪れる「場所」ができあがった。

 そもそも、書店オープンの発端は地元の高校で授業を受け持ったことがきっかけだった。常磐線の終電はもっとも遅いのがくだりで9時20分。1時間に1本しか来ない。

「まだ、帰還住民は少なく、家の灯りはまばらです。だから駅のそばに本屋を開いて、軽食もとれて、雨なんかの時は親御さんが迎えにくる。待ち合わせに使えるような場所をつくりたいと思ったんですね」

 学生が読みやすい雑誌を仕入れ、ゆくゆくは携帯の充電ができるスペースやカフェスペースを併設していく予定だ。
「フルハウス」は作家ならではの視点だけでない、「小高住民として何ができるか」という思いに溢れたものになっている。

 オープンは4月9日(月)13時から。相馬中村藩現当主の相馬行胤(みちたね)さんらを招き、クロストークなどのイベントを行う。参加無料。
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