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ハリルジャパンにある課題。長谷部誠が語った「大前提」とは

【欧州組の現在地】マリ戦後、長谷部誠が語ったこと

■「少ないチャンスを決めきる」しか今はない

 

「今日はボールを取ったあとのプレーの精度もかなり低かった。今日に関して言えば、戦術とかそういう部分もあるだろうけれど、選手個人個人、個々のクオリティという部分でマリの選手に比べると劣っていたと単純に感じる。そこをもっとフォーカスしていかないと」

 長谷部は言葉を選びながら続けた。

「いくら戦術というものがあっても、今日は本当にミスも多かったし、局面局面で簡単にかわされる部分も多かったし、球際で負ける部分も多かったし、それがサッカーの大前提なので、そこをもちろんね、もう一度選手がしっかりと考えるべきだというのを痛感するゲームになった」

 負けはしなかったけれど、勝つこともできなかった。
 勝利のためには得点が必要だ。得点力不足は課題として、戦前から選手たちが口にしていたことだった。

「最後の部分でもう少し、精度をあげれば、得点になっていた部分もあると思う。でも、結局それだけじゃなくて、チームのなかで話しているのは、(攻撃が)詰まった時は、後ろに下げて、やり直して、やり直してから、攻めること。そういう意味では今日のように引いた相手はいい相手だったとは思う。でも、崩しの質もそうだし、本当に小さいミスが多すぎて、リズムがつかめなかったというのもやっていて感じた。みんながもっとボールをもらう意識とか、なんだろうなぁ……もっともっと個人個人でもっていないと厳しいかなって思いますね」

 ボールを受ける、持つための勇気が足りないということか? 

 

「勇気というのが、代表レベルの選手に合うかどうかはわからないですけど、そうですね。もう少し、ほしいなって思いますね。それほど多くのチャンスを作れているわけじゃないので、うしろはしっかりと我慢しなくちゃいけない。我慢して、少ないチャンスを決め切るというのしか、今はないですね」

 昨年11月のブラジル代表、ベルギー代表との連戦では2敗を喫したが、そのとき長谷部は「チーム内のコミュニケーション力があがった。だからポジティブな印象を持っている」と話していたが、今日の敗戦は意味が違うようだ。

「実際、見ている人とプレーしている人との感覚が同じかはわからない。ただ、ミスや1対1の部分で負けていれば、大前提としてサッカーにはならない部分がある。だから、今日の出来には、チームとしても個人としてもまったく満足ができない。そういう意味で、次のウクライナ戦までの3日間を有効に使っていきたい」

 国内なのか、欧州なのか、どこでプレーしているかにかかわらず、経験という意味でマリ戦のピッチに立った選手たちが、豊富にそれを持っているわけではなかった。
 そして。ポジション争い、ワールドカップメンバー生き残りという意味で、チャンスをもらった選手たちは慎重にプレーしているようにも感じた。ミスを恐れるために消極的なプレーとなり、それがミスを誘発してしまうアグレッシブさを失ったチームは、野心に満ちた若いマリ代表を前に屈したのだろうか?

 ハリルホジッチ監督がいう「ワールドカップで偉業をとげる」という絵を描くには、失うものはないと開き直った強さが必要だろう。個の力を3日間で強化することはできない。ならば、どうするのか? ウクライナ戦まで、再び修整力が試される。
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寺野 典子

てらの のりこ

1965年兵庫県生まれ。ライター・編集者。音楽誌や一般誌などで仕事をしたのち、92年からJリーグ、日本代表を取材。「Number」「サッカーダイジェスト」など多くの雑誌に寄稿する。著作「未来は僕らの手のなか」「未完成 ジュビロ磐田の戦い」「楽しむことは楽じゃない」ほか。日本を代表するサッカー選手たち(中村俊輔、内田篤人、長友佑都ら)のインタビュー集「突破論。」のほか中村俊輔選手や長友佑都選手の書籍の構成なども務める。


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