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宇野常寛が今のテレビ業界に思うこと。

宇野常寛さん3月毎日更新 Q9. 「コメンテーターとしてテレビに出たことで変わったことはありますか?」

「BEST T!MES」連載30問30答、3月は宇野常寛さんを特集! 自ら企画ユニット『PLANETS』を主宰、近年はメディアでの活躍も増える中、評論家として最新作『母性のディストピア』が大ヒット中。多彩な活動を続ける彼の「素顔」に30の質問で迫ります。

出演したことで見えてきたテレビの現状

 

 コメンテーターとして、2年間レギュラーを務めましたが、その間はテレビのダメなところをひたすら見てきたという感じです。

 例えば、テレビ局の人たちは、自分達のことが好き過ぎるんですよ。そして、テレビが全盛期だった昭和後期から平成までの何十年を“永遠の物“だと思っているように感じますね。世の中はグローバル化や情報化が進み、国際情勢も含めて非常に大きなレベルで変わっているにもかかわらず、そのことを認めたくないように見えます。きっと、世の中が変化していることをわかっていても「自分達にはあまり関係ない」とか思っているでしょうね。なんか、「自分達はそんなに気にしなくていいんだ」ということを無理やり自分達に言い聞かせて精神安定剤にしている。しかも、その現実を甘んじて受け入れるのが大人の対応なんだみたいなスタンスだったりします。結局、全て自己防衛なんですよね。言い訳ばっかりしている人が集まっているなと。その結果として、本当にマイナスをゼロにする為の仕事みたいなことしかできていない。

 

 現場で見ているとより実感していましたが、テレビを見ている人でも勘の良い人は気づき始めていると思いますよ。僕がコメンテーターとして出演したのは視聴者に「こんなもん見ていると、お前ら本当にバカになるぞ」っていうことを言うためだけに出ていたんですよ。でも、相変わらず扱っているネタも面白くないでしょ? この前まで不倫問題や相撲の問題などが取り沙汰されていましたが、本当にバカだと思いますね(笑) 。

 「不倫ネタを報じれば主婦層から視聴率が取れる」という意見もあるようですが、それは単に主婦をバカにしているだけですからね。テレビ局のスタッフには、自分達がお客(視聴者)を育てるという意識がなくなったと思います。テレビって一昔前までは挑戦者だったので、昔はそういった意識もあったんですよ。いつの間にかその挑戦するスタンスがなくなってしまった。その理由は端的にはおごっているからでしょう。だって、放送法にしっかりと守られているじゃないですか。それに、正社員なら年収2000万円コース。本来は、とっとと電波オークションでも何でも良いですけど、放送法を改正してなくしてしまう方が良いと思いますけどね。

〈明日の質問は…… Q10.「今まで会った中で一番緊張した人は?」です。〉

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宇野常寛・著母性のディストピア

 

宮崎駿、富野由悠季、押井守--戦後アニメーションの巨人たちの可能性と限界はどこにあったのか?

宮崎駿論4万字、富野由悠季論10万字、押井守論10万字の作家論を中核に、アニメから戦後という時代の精神をいま、総括する。
そして『シン・ゴジラ』『君の名は』『この世界の片隅に』――現代のアニメ・特撮が象徴するさまよえるこの国の想像力はどこにあるのか?

『ゼロ年代の想像力』『リトル・ピープルの時代』とその射程を拡大してきた著者の新たな代表作にして、戦後サブカルチャー論の決定版。

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宇野 常寛

うの つねひろ

評論家。1978年生。批評誌〈PLANETS〉編集長。著書に『ゼロ年代の想像力』(早川書房)、『リトル・ピープルの時代』(幻冬舎)、『日本文化の論点』(筑摩書房)、『母性のディストピア』(集英社)。石破茂との対談『こんな日本をつくりたい』(太田出版)、『静かなる革命へのブループリント この国の未来をつくる7つの対話』(河出書房新社)など多數。企画・編集参加に「思想地図 vol.4」(NHK出版)、「朝日ジャーナル 日本破壊計画」(朝日新聞出版)など。京都精華大学ポップカルチャー学部非常勤講師、立教大学社会学部兼任講師など、その活動は多岐に渡る。


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母性のディストピア
  • 宇野 常寛
  • 2017.10.26