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【教育デジタル化の出口】「個別最適な学び」と「協働的な学び」は同居できるか

第64回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■加速せざるを得ないICTの利活用

 個別最適でのICT利用であれ協働でのICT利用であれ、「学校に居なければならないのか?」という疑問がついてまわる。
 ICTで他校の子どもたちとつながるためには、教室でなくても自宅でもできる。答申が指し示している方向には、オンライン教育があるような気がするのだ。そのオンライン教育について、答申(概要)は次のように述べている。

「今般の新型コロナウイルス感染症のための臨時休業等に伴う遠隔・オンライン教育等の成果や課題については、今後検証を進める」

 今後の検証が必要としているだけで、遠隔・オンライン教育が必要なのかどうかは言及していない。新型コロナウイルス感染症での一斉休校から1人1台ICT端末導入が前倒しされた経過を踏まえれば、「今後検証」ではなく、こここそ一定の方向性を示してほしいところではないのだろうか。また、答申はこのように続いている。

「対面指導の重要性、遠隔・オンライン教育等の実践による成果や課題を踏まえ、発達段階に応じ、ICTを活用しつつ、教師が対面指導と家庭や地域社会と連携した遠隔・オンライン教育とを使いこなす(ハイブリッド)ことで、個別最適な学びと協働的な学びを展開」

「今後検証」としながら、教員が対面指導と遠隔・オンライン教育を使いこなすことを求めている。対面とオンライを両立させる、と言っているわけだ。しかも、その役割は教員に丸投げされている。
 1人1台ICT端末の導入が実現するのにともなって、「ICT利用を急げ」と学校現場を急かす自治体が増えてきているという。「せっかく導入するのだから成果を示せ」ということなのだろう。

 そこに中教審が「個別最適」を示したことで、さらに学校現場はICTの利活用を急かされることになるだろう。遠隔・オンライン教育への取り組みも求められていく。しかも、「協働的な学び」も実現しなければならない。

 どう実現するかも大問題だが、そもそも、どういうものを目指しているのかが答申ではあやふやなので、そこから学校現場は考えていかなければならない。
 それが、学校現場にできるのだろうか。混乱は避けられないだろうし、学習アプリの利用競争になってしまう懸念も大きい。

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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