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ドイツ軍戦車「ティーガーI」の乗員の生存率が高かった理由

無敵重戦車ティーガーI戦記 第3回

ティーガーIの乗員の生存率が高かった理由

 重装甲は、乗員の生存率にも影響を及ぼした。本車もIV号戦車もパンターもその乗員数は5名だが、後二者に比べてティーガーIの乗員の生存率は高かったという。その理由は、本車の重装甲を貫徹する際に徹甲弾の威力が削がれ、貫通時に生じる破片効果が弱くなるうえ、貫徹した徹甲弾自体の運動エネルギーも減衰しているので、危害範囲が狭くなるためだといわれる。

 本車のもうひとつの自慢である強火力の源は、8.8cmFlaK 36高射砲を戦車砲に転用した伝家の宝刀、56口径8.8 cmKwK36戦車砲である。元来、高射砲は航空機を撃つための火砲なので、砲弾を高初速で撃ち出して高空にまで到達させねばならないが、この高初速が、敵戦車の装甲を貫徹しなければならない徹甲弾を撃ち出す戦車砲にも適していたのだ。

 8.8 cmKwK36はスターリンII重戦車以外のM4シャーマンやT34といった連合軍戦車なら、1000m~1500mの遠距離から確実に撃破できた。また、強敵スターリンIIでも500m以内であれば、撃破は困難ではなかった。

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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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