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全国で3ヶ所。「自転車一方通行」標識で事故を防げ!

【毎月20日更新】世にも奇妙な道路標識 第8回:自転車一方通行

自転車道が作られた理由

 いかにも不自然な道であるので、何か理由がありそうだと思って調べてみたら、以前にここの歩道で自転車同士が正面衝突し、女性が死亡する事故が起きていたらしい。ガード下へ向けての急な下り坂である上、カーブしているので見通しが利かず、タイミングが悪ければかなりの速度で激突してしまうだろう作りだ。そうした悲しい事故を教訓に、わざわざ車道を削ってこの自転車道が作られたらしい。

 ただ、これがうまく行っているかというと、そうともいえないようだ。相模原でも川崎でも、筆者が居合わせた数十分の間に、歩行者レーンを逆走する自転車を見かけた。ルールの徹底は想像以上に難しいようで、これが自転車一方通行の普及しない理由でもあるのだろう。

 ただ、逆走してしまう気持ちも全くわからないではない。一方通行を遵守すると、たとえばちょっと後戻りしたいだけでも、車道を2度横断して非常な大回りをしなければならないから、相当に面倒ではあるのだ。

 とはいえ、面倒だからと反対車線を逆走する自動車はいないわけで、このあたりは慣れと心がけの問題だろう。ルールと心構えが十分に浸透するまで、「自転車一方通行」はしばらくレア標識のままであり続けそうだ。

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佐藤 健太郎

さとう けんたろう

1970年兵庫県生まれ。東京工業大学大学院理工学研究科修士課程修了。大手医薬品メーカーの研究職を経て、サイエンスライターとして独立。文系の読者にもわかりやすい解説で定評があり、東京大学大学院理学系研究科の広報担当特任助教として東大の研究実績を対外発信する業務も担当した。『医薬品クライシス』(新潮新書)で2010年科学ジャーナリスト賞、2011年化学コミュニケーション賞を受賞。著書はほかに、『「ゼロリスク社会」の罠』『化学で「透明人間」になれますか?』(ともに光文社新書)、『炭素文明論』(新潮新書)、『ふしぎな国道』『世界史を変えた薬』(ともに講談社現代新書)などがある。


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