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甲子園球場の名前の由来 「甲子」とは何か

なぜ1年354日? 伝統行事との関係は? 暮らしに役立つ「旧暦」①

◆「来年の干支は戌年」ではない?

 中国から伝わった「十干十二支」は、歴史上の出来事などで目にする。「壬申(じんしん)の乱」や「戊辰(ぼしん)戦争」は、それが起きた年の干支から名付けられたのだ。また、兵庫県の「阪神甲子園球場」も、甲子の年に完
成したことが名前の由来。
「今は、『来年の干支は戌(いぬ)年だ』というように言われますが、本当
はおかしい。干支とは、『十干十二支』のことなので、60年でひと回りします。61歳になると、自分の生まれた年の暦の干支に還るから『還暦』と呼ばれるんですね。生まれた年の干支に関して、『丙午(ひのえうま)の女性は気性が荒い』と言ったりもしますが、あれは単なる迷信。みんなが面白がるからでしょうか、江戸時代の後期に流行ったのですが、現代の血液型占いのようなも
のです」。

 もともと「十干」とは、十進法の数え方。1カ月を上旬・中旬・下旬と10
日ごとに分け、それぞれ1日目から甲(きのえ)・乙(きのと)・丙(ひのえ)・丁(ひのと)・戊(つちのえ)・己(つちのと)・庚(かのえ)・辛(かのと)・壬(みずのえ)・癸(みずのと)と数えていた。一方「十二支」は、太陽系の5つの惑星の中で最も重要とされる木星の運行を12に区分したことが始まり。それが、12カ月の月の呼び名として使用されるようになり、覚えやすいように各月に多少ゆかりのある動物の名前が付けられた。その後、月だけではなく年や日、時刻や方位など、時代とともにさまざまな用途に使われるようになったのだ。

「時代小説に『草木も眠る丑三(うしみ)つ時』という言葉が出てくるでしょ
う。丑の刻は、午前1時から3時、三つ時はそれを4等分した3つ目の時間なので、丑三つ時は2時から2時半ごろになります」。
 正午や午前、午後という言い方も、十二支が由来だ。午前は午の刻の前、午後は後を意味する。

〈雑誌『一個人』2018年1月号より構成〉

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新谷 尚紀

しんたに たかのり

國學院大學文学部教授

国立歴史民俗博物館名誉教授。国立総合研究大学院大学名誉教授。民俗学者。1948年広島県生まれ。早稲田大学第一文学部日本史学科卒業、同大学院博士過程修了。主な著書に『和のしきたり 日本の暦と年中行事』(日本文芸社)『日本人の春夏秋冬』(小学館)など多数。


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