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【日本の学力と学習意欲】『脱ゆとり教育』が得たものと失ったもの

第56回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

■「学習意欲」に関する調査結果を読む

 つまり、『毎日新聞』をのぞいて『読売新聞』と『産経ニュース』、そして『朝日新聞』も「脱ゆとり教育」を評価していることがわかる。「脱ゆとり教育」は現在も続く方針で、学力偏重の傾向はますます強まっている。その方向性を、大手マスコミの多くが支持しているようにも受け取れる。
 しかし今回のTIMSSの調査結果で明らかになっているのは、「トップ水準」の成績だけではない。学習意欲についても調査している。
 その結果を端的に伝えているのが『毎日新聞』だった。タイトルにも【『算数・数学の勉強は楽しい』は平均下回る】とあり、記事でも「学習意欲などを尋ねる調査では国際平均を下回る項目が目立った」と記されている。

 調査結果では、「算数・数学の勉強は楽しい」と答えた割合は小4で77%となっている。国際平均が84%だから、日本は「楽しい」と感じている割合が少ないことがわかる。中2になると、国際水準が80%なのに対して日本は56%となり、大きく下回ってしまっている。
 これが理科になると、小4の国際水準では86%だが日本は92%と上回っている。ただし中2では、国際水準の81%に対して日本は70%でしかない。
『毎日新聞』の見出しは、この小4を強調していることになる。ただし記事は、それを問題だと指摘するものではない。

 

■「脱ゆとり教育」が導く未来は明るいか

 つまり、TIMSSの調査結果からわかったことは、「日本の子どもたちは、点数は上げられても学習そのものを『楽しい』とは思っていない」ということではないのか。大手マスコミも順位には注目しているが、学習意欲となるとあまり問題にしていない。
 ここに、現在の日本における教育の実態があらわれているようだ。
 点数や順位を上げることにはこだわるが、学習意欲となると二の次というのが日本の教育の実態ではないのか。それが、「脱ゆとり教育」である。「脱ゆとり教育」の成果が着実にでていることが、TIMSSの結果となってあらわれている。それを大手マスコミも評価している。今後も「脱ゆとり教育」の傾向は強まっていくに違いない。

 はたして、これに学校現場は納得しているのだろうか。
 このままでは、点数や順位は上げられるが、子どもたちが楽しいとは思えない授業が進んでいくことになるだろう。

 

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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