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財務省の「少人数学級の効果はない」に対する教員からのブーイング

第53回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

少人数学級

■「少人数学級」を経験した教員の声を聞け

 

 教員たちの怒りは止まらない。
 10月26日に開かれた財務相の諮問機関である財政制度等審議会の歳出改革部会は、文科省が概算要求に盛り込んだ少人数学級の体制整備について議論した。そこに財務省が提出した資料には、少人数学級の学力への影響について「学級規模の縮小の効果はないか、あっても小さいことを示している研究が多い」としている。

 これを鵜呑みしたためなのか、部会では少人数学級を支持する流れにはならなかったようだ。部会終了後の記者会見で部会長代理の土居丈朗・慶大教授は、「一律に少人数学級をすすめるべきだという意見は大勢でなかった」と述べている。

 この資料をつくった財務省、そして歳出改革部会の姿勢については、学校現場の教員から疑問と怒りの声が多く聞こえてきている。桃山学院教育大学人間教育学部の松久眞実教授が行った聞き取り調査では、次のような声があったという。

「少人数学級にすれば、学力は上がります。わたしは現在、21人のクラス担任をしていますが、これまでの30人以上の学級との違いを強く感じています」

 その“違い”について、その教員は「20人程度であれば、しんどい子も含めて全員を授業に参加させることができる。しかし、30人を超えたら難しい」と説明している。
 学級としての学力を向上させるには、授業に参加できていない子どもたちの存在を考えなければならない。
 授業中にじっとしていられないなど、問題のある子が現在の学校では増えてきている。教員が「しんどい子」と呼ぶ子たちだ。そういう子も含めて、学級としてまとめ、授業に集中させることは簡単ではない。授業効率も悪くなる。学力向上も難しくなってくるわけだ。ましてや、卒業したばかりの新任でも担任を任されることも珍しくない今はなおのことだろう。

 しかし、これが20人ほどなら違ってくると実感してるという。財務省は「効果がない」と言うが、現実に「効果がある」と主張する教員がいる。財務省は、現場の声を無視していることになる。それは、ただ少人数学級に反対することを目的にしているのが財務省の姿勢だからにほかならない。
 教員の負担を軽くするためにも、少人数学級は実現しなければならない。そういう現実を、財務省や歳出改革部会には理解できていない。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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