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NHK「パパ活」報道は「セックスワーク」に対する認識と敬意不足を露呈(藤森かよこ)

セックスワーカーはエッセンシャルワーカーである


 NHK12月1日放送『クローズアップ現代』は「“パパ活”の闇  コロナ禍で追い詰められる女性たち」を特集。話題になった。内容は、「コロナ禍で、経済的に困窮する女性たちが深刻な危機に陥っている。そのなかいわゆる“パパ活”に足を踏み入れる女性たち。男性と一緒に食事などをすることで、金を提供してもらうものだが、トラブルの温床ともいわれ、“個人売春”につながるケースも。そんな“パパ活”の実態に迫るとともに、コロナ禍で追い詰められる女性たちの苦悩を伝える」というものだ。

 『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。』(KKベストセラーズ)がベストセラーとなり、第2弾『馬鹿ブス貧乏な私たちを待つ ろくでもない近未来を迎え撃つために書いたので読んでください。が12月末に出版予定の、藤森かよこ氏(福山市立大学名誉教授)が、NHKの番組の制作姿勢について疑問を呈した。

  そもそも、番組制作者サイドに「セックスワーク」に対する偏見があるのではないか?  「セックスワーカー」に対する認識と敬意が不足しているのではないか? 


■「クローズアップ現代」の「パパ活問題」を視聴した

 NHKの見逃し配信アプリで、121日放送の「クローズアップ現代」の「“パパ活”広がる性被害▽生活苦が女性を追い詰める」を視聴した。

 「パパ活」は2017年にTVドラマ化されたので、特に新しい現象ではない。「援助交際」の新しい呼び方だ。

 インターネットを検索すれば、「パパ活」ブログの多さに驚く。パパ活の効果的な方法とかパパとのより良い人間関係の構築法とか、いろいろ伝授している。

 なんと「ママ活」もある(ママ活の内容!初心者でもわかる流れやコツ『felice』2020年6月26日)。

 5年ぐらい前に、地下鉄のホームで、どう見ても母と息子には見えない年齢格差男女カップルが小声でジットリと口論しているのを目撃したことがある。あれはママ活の失敗例だったのだろうか。

 パパ活専用アプリというものも開発されている。パパ活女衒(ぜげん)というかパパ活専門人材派遣センターもある。パパ活女衒業は、2020年は特に大繁盛である。もちろんコロナ危機による雇用収縮収入激減のせいである。

 NHKの「クローズアップ現代」は、コロナで解雇されたのでパパ活により生活費を得ている若い女性とか、夫の収入が激減し生活費も渡してくれないので、貯金を取り崩すだけでは不安なのでパパ活を始めた子持ちの若い主婦を取材していた。

 パパ活は、デートをすることから、両性が意気投合して性交に至るまで、いろいろ段階がある。どの段階で活動をすませるかは自由である。どの段階において終了しても、パパが金銭を支払う(援助する)。両性の合意があれば、それは個人の自由な交遊なので、他人がどうのこうの言う問題ではない。

 が、そういうわけにはいかずNHKが取り上げるのは、問題があるからだ。女性が性犯罪の被害者になりやすいからだ。性犯罪だけで済まない事例もある。

 11月18日配信「東洋経済オンライン」には、ITジャーナリストの高橋暁子が「パパ活」を甘く見る女子中高生に迫る超危険 性被害や殺人の可能性を忘れてはいけない」という記事を配信していた(「パパ活」を甘く見る女子中高生に迫る超危険――性被害や殺人の可能性を忘れてはいけない『東洋経済ON LINE』2020年11月18日)

 そもそもが、働きたくても雇用がない経済状況だから、パパ活をして女性が稼がなければならないという政治の失敗の問題がある。コロナを理由に経済活動を強制停止させるのならば、それなりの対策が必要なのに。

 しかし、わざわざ見逃し配信で、その番組を視聴した私としては、番組制作者たちの姿勢に関して大いに不満を感じた。不満のひとつは、セックスワーカーを「社会の犠牲者」として見る暗黙の前提について。もうひとつの不満は、女性セックスワーカーに対する男性客の暴行の原因を考える姿勢の欠如について。

次のページセックスワーカーがかわいそうなんて、いつの時代の感覚か?

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藤森 かよこ

ふじもり かよこ

1953年愛知県名古屋市生まれ。南山大学大学院文学研究科英米文学専攻博士課程満期退学。福山市立大学名誉教授で元桃山学院大学教授。元祖リバータリアン(超個人主義的自由主義)である、アメリカの国民的作家であり思想家のアイン・ランド研究の第一人者。アイン・ランドの大ベストセラー『水源』、『利己主義という気概』を翻訳刊行した。物事や現象の本質、または人間性の本質を鋭く突き、「孤独な人間がそれでも生きていくこと」への愛にあふれた直言が人気を呼んでいる。

 

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