11月25日、三島由紀夫が割腹自殺する前に発した予言
『日本人は豚になる~三島由紀夫の予言』より
■自衛官の罵倒
安倍晋三は憲法九条に自衛隊を明記し「違憲論争に終止符を打つ」と表明した。九条の一項(戦争の放棄)、二項(戦力の不保持と交戦権の否認)をそのままにして自衛隊の存在を明記するのは、自国の軍隊の法的な立場を明確にするという改憲派が積み上げてきた議論を全部ぶち壊したということだ。
これは戦後の欺瞞に欺瞞を積み重ね、憲法の意味を破壊するということである。
これに対し、自衛隊の制服組トップの河野克俊統合幕僚長は「自衛隊の根拠規定が憲法に明記されるのであれば非常にありがたい」と発言(二〇一七年五月二三日)。元統合幕僚長の斎藤隆は「二項が維持されれば、自衛隊は『陸海空軍』とは切り離された特殊な存在であり続ける可能性はある。しかし、根拠規定が明記され、合憲と整理された後に、軍隊とは何か、自衛隊とどう違うのかなどのかみあった議論につながっていくのではないか」「最終的には国民の判断だ」(『読売新聞』二〇一七年五月三〇日)とインタビューに答えていた。
頭がクラクラ。
案の定、自称保守や「改憲派」は表立って安倍を批判することはなかった。
「檄」の最後は次のように締めくくられている。
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沖縄返還とは何か? 本土の防衛責任とは何か? アメリカは真の日本の自主的軍隊が日本の国土を守ることを喜ばないのは自明である。あと二年の内に自主権を回復せねば、左派のいふ如く、自衛隊は永遠にアメリカの傭兵として終るであらう。
われわれは四年待つた。最後の一年は熱烈に待つた。もう待てぬ。自ら冒涜する者を待つわけにはいかぬ。しかしあと三十分、最後の三十分待たう。共に起つて義のために共に死ぬのだ。日本を日本の真姿に戻して、そこで死ぬのだ。生命尊重のみで、魂は死んでもよいのか。生命以上の価値なくして何の軍隊だ。今こそわれわれは生命尊重以上の価値の所在を諸君の目に見せてやる。それは自由でも民主主義でもない。日本だ。われわれの愛する歴史と伝統の国、日本だ。これを骨抜きにしてしまつた憲法に体をぶつけて死ぬ奴はゐないのか。もしゐれば、今からでも共に起ち、共に死なう。われわれは至純の魂を持つ諸君が、一個の男子、真の武士として蘇へることを熱望するあまり、この挙に出たのである。(同前)
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三島に向かって自衛官たちは「気違い」「そんなのいるもんか」「ひきずり降ろせ」「銃で撃て」といった野次を浴びせた。その怒声やヘリコプターの音で、三島の演説はかき消された。
〈『日本人は豚になる 三島由紀夫の予言』より再構成〉
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