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三島由紀夫は「愛国教育や国粋主義」を嫌い、「徴兵制と核武装」を否定した

日本人は豚になる~三島由紀夫の予言⑧

おもちゃの軍隊

 三島はナショナリズムが要請する「選択された伝統」のいかがわしさも熟知していた。

 大東亜戦争における日本軍の世界史的位置づけもわかっていた。

 軍部にも昭和天皇にも批判的だった。

「愛国者」を自称する人間を嫌悪した。

「愛国心」を嫌った。

 それでも「おもちゃの軍隊」を結成した。

 それが悪趣味なままごとであることは、三島自身がよくわかっていた。

 三島は当時西武デパートの社長だった堤清二に電話した。

 この時の話を、辻井喬(堤のペンネーム)はこう書いている。

堤清二(1927-2013)/実業家、小説家、詩
人。筆名は辻井喬。セゾングループの元代表。

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 実は、楯の会の制服は、私のところでつくったのです。当時、三島さんはフランス大統領のド・ゴールの洋服[軍服か]をとても気に入っていた。だから楯の会の制服は、ド・ゴールの洋服をつくっている人に頼みたいと思ったのです。それでいろいろ調べたら、日本人がつくっていた。五十嵐九十九(いがらしつくも)。それなら頼みやすい、五十嵐はどこにいるかと探したら、西武百貨店の紳士服の顧問デザイナーというのかな、そういった仕事をしていた。それで私のところに、「あんたのところに五十嵐というのがいるか」と電話がかかってきた。「ああ、いますよ」と言ったら、「ちょっと頼む」ということになった。

 それで会ったら、「こういう世界最小の軍隊を僕はつくる。制服が大事なんだ、恰好がよくなければいかん」と言う。「何でそんなものをつくるんですか」と言ったら、「それはね、作品だよ、作品」と言っていました。政治運動ではない、作品だと。

 このとき以降、月一回かな、昼食を食べたり、飲みに行ったりしました。私自身、楯の会については何の意味もないと思っていましたが、彼はノッていましたね。ちゃんとお金を払ってくれましたから、会社に対しては具合が悪くありませんでしたよ。制服は四〇人分くらいつくらなければならず、相当大変だったと思いますが、いい制服でしたね。(『わが記憶、わが記録 堤清二×辻井喬オーラルヒストリー』) 

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 おもちゃの軍隊は「祖国防衛隊」から「楯の会」に改名され、自衛隊で訓練を続けるうちに、実体のあるものになってくる。

(適菜収著『日本人は豚になる 三島由紀夫の予言』KKベストセラーズ刊より再構成)

 

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適菜 収

てきな おさむ

1975年山梨県生まれ。作家。ニーチェの代表作『アンチクリスト』を現代語にした『キリスト教は邪教です!』、『ゲーテの警告 日本を滅ぼす「B層」の正体』、『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』、『ミシマの警告 保守を偽装するB層の害毒』、『小林秀雄の警告 近代はなぜ暴走したのか?」(以上、講談社+α新書)、呉智英との共著『愚民文明の暴走』(講談社)、中野剛志との共著『思想の免疫力 賢者はいかにして危機を乗り越えたか』、『遅読術』、『安倍でもわかる政治思想入門』、『日本をダメにした新B層の研究』(KKベストセラーズ)、『ニッポンを蝕む全体主義』『安倍晋三の正体』(祥伝社新書)など著書50冊以上。「適菜収のメールマガジン」も好評。https://foomii.com/00171

 

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  • 2020.11.05