【自民党65歳】「サンセイのハンタイの反対は賛成‼️」自己愛と幻滅の平民ジャパン——1955年11月15日自由民主党結成《今日はニャンの日》 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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【自民党65歳】「サンセイのハンタイの反対は賛成‼️」自己愛と幻滅の平民ジャパン——1955年11月15日自由民主党結成《今日はニャンの日》

平民ジャパン「今日は何の日」:8ニャンめ

◼︎この65年間で起きたこと

 政治的議論なき国…ジャパン。
 田中角栄の追い落としをきっかけとして派閥政治、金権政治が批判された時代があった。
 中選挙区制から小選挙区比例制への制度変更もあった。
 自民党の宿痾と言われた党内派閥を衰えさせたが、結果的に自民党に存在しなかった「党中央」を、行政機関である首相官邸というかたちで生み出した。

 土地に紐づいた票田を相続する子弟女婿か、さもなくば頭数要員の低劣な落下傘候補者かの2択を与えることで、誰が国会議員になるかを選ぶ発想を平民から奪った。
 NHKと新聞社による世論調査が頻繁に行われ、一票の無力を日々刷り込んだ。
 投票を決める以前に結果がわかっていたら投票する意味は無い。
 繰り返し生まれては消える新党は、あだ花にすらならず、新しい政治の流れなど決して生まれはしないと誰もが確信するまでに至った。
 有名無名の議員たちはGRP(テレビ露出量)を求めてバラエティー番組に出演し、政策議論を15秒CM化した。
 二流タレントが議員となり、都道府県知事になった。
 政策対立の無効化が確実に進んだ。
 政治イコール「政局」(誰がどうした、ただそれだけ)となって、始まる前から、筋も終わり方も同時に見える四コマ漫画になった。

 そこにはダークヒーローの一人もいない。そして、日本は衰えていく。

◼︎もはや保守政治家もいない日本のディストピア

 保守合同のとき、政治家はまだまだ特殊な職業だった。
 「党人」と言われたたたき上げも、「高級官僚」からの転身も、特殊な人間たちが政治家になった。いま見渡す限り政治家を名乗る人々は「凡人」だ。

 それは平民ジャパンの劣化と正比例している。

 幼稚化した老人、意思を持てない大人、心の折れた子供たち。
深く静かに広く、ネガティブな感情が広がるジャパン。
 嫉妬、羨望、諦観、無関心、結晶化した恨みつらみのマグマを、表面だけの善意が覆い隠す。コンプライアンスが違法な状態を包み隠す。

 65年間かけて、熱狂と正直さは日本から徐々に失われた。

 1964年の東京オリンピックは再来しない。
 1970年の大阪万博は再来しない。
 三波春夫の歌はもう二度とかからない。

 三島由紀夫は命を懸けてこう予言した。
「このまま行ったら日本はなくなって、その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜け目がない、或る経済大国が極東の一角に残るのであろう」(『産経新聞』1970年7月7日付)と。

 この天才ですら、格差の広がりと階級の固定までは読み切れなかった。

 AO入試で学力の落ちた学生たちは奨学金という借金を背負って生きる。
超大手企業正社員を頂点として、子会社孫会社関係会社下請け孫請け派遣無職生活保護の固定したヒエラルキーのどこかに居場所を与えられる。

 日本は選択肢の無い国になった。
 ブラックもホワイトも無駄だらけで、誰もかれもが意味不明に忙しい。
 女はもっと時間が無い。仕事のストレスは社内にある。家庭に居場所が無い。くつろぐ時間もない。プライバシーがない。
 だからスマホでソシャゲ、パチンコ、一人カラオケ、持ち帰る仕事はファミレス、アニメを見る時間もゲームをやる時間も言うほど無い。
 チューハイとコンビニ弁当で漫画アプリ読んで寝落ちする。
 鳩山一郎の孫の鳩山由紀夫、鳩山邦夫(故人)は、すでに政治の表舞台から去った。
 吉田茂の孫の麻生太郎も菅政権では用済みだ。
 岸信介の孫の安倍晋三は晴れて戦後最長政権を達成して首相を引き、河野一郎の孫の河野太郎は総裁選を断念して大臣職を保ち断固としてハンコを廃止する。
 そして、彼らの子弟に受け継がれていく。

 アルゴリズムと人工知脳が運転する金融経済が支配する世界では、人間の倫理観に制御を期待することがもはやできない。チキンゲームはクラッシュするまで続き、クラッシュしても生身の人間の屍を乗り越えてシステムは再起動する。平民はすり減り、踏みつぶされていく。郵政民営化を果たした国際金融資本はまだまだ日本を狙っている。最後の黄金伝説、日本の公的年金資金162兆円が残っている。ただでさえ破綻した健康保険と年金制度は、それ自体支えきれなくなって、奪われていく。

 ネットフリックスのCEOは日本での成長に大きな可能性を感じている。ハリウッド、韓流、そしてジャパニメーションの次にくるものは何か。日本にはなかった政治エンターテインメントかもしれない。
 あふれかえるディストピア、輪廻転生、貴種流離譚、悔恨共同体の悲しみと絶望のストーリーが、世界に輸出されるかもしれない。政治の貧困から乱世の物語は人類の定番だ。

 日本は落ちたというのはまだ早い。下には下がある。まだまだ底ではない。低空飛行でもまだ飛んでいる。家の下に巨大な空洞があることを知らずに生きている。放射能汚染は故郷の山河をゆっくりと半永久的に破壊している。

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猫島 カツヲ

ねこじま かつを

ストリート系社会評論家。ハーバード大学大学院卒業。

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