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10月1日、「近くて一番遠い国」の建国記念日【71年前の今日:中華人民共和国建国】

平民ジャパン「今日は何の日」


 日本人にとって、もっとも近くて遠い国——それが中国。中国の国力の増大と「嫌中」意識は比例して大きくなっている実情があるようだ。日本の近現代史と密接に関わり、いまや経済力・軍事力・教育(学力)まで凌駕されている。このジャパンの失われる「力」への愁訴と呪詛の声が「嫌中」に表象されているならば、その声だけで「実力」の逆転はないだろう。ではどうすればいいのか? まず、中国と向き合うこと。しっかりとその実像を確かめること。
 今から71年前に「出来た」新興国、中華人民共和国。
 14億の「平民」を束ねる政府の「弱点」は中国4000年の歴史から見た時、意外な脆さを内包していることも見えてくる。この近くて遠い国の「建国」から冷静に見ておこう! 千代に八千代に続く日本の「平民」として。ナゾの言論人、猫島カツヲがお届けする第4弾!!


■「嫌中」するあなたは隣の超大国を知ってますか?

寝島カツヲ
1949年、天安門にて中華人民共和国の建国を宣言する毛沢東(写真:パブリックドメイン)

 

 1949101日、71年前の今日、毛沢東率いる中国共産党によって中華人民共和国という巨大国家がアジアに誕生した。中国にとって、アヘン戦争(1840年)に始まり、日本の敗戦(1945年)でようやく終わった「屈辱の百年」の終焉でもあった。以来、一党独裁を貫きながら、政府主導で経済をコントロールし、世界第2位の地位を築いた。中国共産党にとって重要な記念日も、14億の中国平民にとっては、ただのお休みだ。今年は中秋節と重なり8連休となる。中国に「親しみを感じない」ことが常態化した日本平民にとっては、年に一度、「関係性が最悪レベルに達している」隣の超大国について、おさらいをする日があったほうがいい。

 昨年は建国70周年で、習近平主席の閲兵軍事パレードは過去最大規模、ヒマな人はYouTube(CCTV中国中央电视台で見てみよう。ノーカット版は3時間ある。
https://www.youtube.com/watch?v=TypEKtdYN6w

 日本では決して見ることのできない壮大なエンターテインメントだ。ありとあらゆる武器・戦闘車両のオンパレード、日本にはないミサイル系のやつもバンバン出てくる。選び抜かれた15000人の将兵と選び抜かれた10万人の参列者を前に国歌が演奏され、イケメンでスタイル抜群の儀仗兵たちが「五星紅旗」掲揚をする。

■中国国歌「義勇軍行進曲」は100%戦いの歌

 トランペットで始まる勇ましい曲が「義勇軍行進曲」だ。南京の国民党政府時代、抗日戦争をテーマにした1935年の映画『風雲児女』(嵐の中の若者たち)の主題歌だ。監督の許幸之は東京美術学校(東京藝大)卒、脚本・作詞の田漢は東京高等師範(筑波大)に留学(文革期、日本文化への依拠が強いと批判され獄中死)、作曲の聶耳は日本留学中、若くして神奈川県で亡くなっている。さかのぼって、中華民国の父と言われる孫文も、国民党初代総統の蒋介石も日本に亡命しており、日本に有力な支援者たちがいた。いま日本にいる中国人留学生の中にも、将来の国家的指導者や起業家がいると考えたほうがいい。

 国と国との関係は、人と人との人間的な交流と切っても切れない。外交は必ずしもエリートだけのものではない。平民同士の交わりも互いの世論を形成し、政策に影響を与える。それはいまも変わらない。

 義勇軍行進曲は文革期には禁止、歌詞が書き換えられる紆余曲折を経て、2004年の憲法改正時、正式な国歌として憲法に明記された。起ち上がれ!前進せよ!という言葉が何度も何度も繰り返される、100%、戦いの歌だ。

「奴隷になることを望まぬ者たちよ、起ち上がれ」「敵の砲火に向かって進め」という歌詞の「敵」とはもちろん日本軍を指している。日清戦争、満州事変、日中戦争と長らく戦争してきた、かつての日本があって、いまの中国がある。

 

■中国を唾棄しながら依存するジャパンの二枚舌

 お互いが運命に影響を与えあうのが歴史だ。2007年にアメリカを抜いて、輸出入総額ナンバーワンの貿易相手国となり、2010年にはGDPで日本を超え、2020年のGDPは日本の3倍だ。コロナでピタッと止まっているが、昨年の中国からの本邦来訪者は952万人で、インバウンドの3分の1を占めていた。認めたくないかもしれないが、中国という「最大の取引先」無くして、株式会社ジャパンは存在できない。

 一方、日本全土には5万人の在日米軍がフルフルに核武装して、がっつり構えている。核兵器に覆われた世界においては、アメリカ無くして、日本は生存を確保できない。

 米・中関係が、いまだかつてないほど広範にわたって緊張を高めている。経済、情報、外交、チベットやウイグルなどの人権、香港、そして台湾、アジア太平洋のリアルな安全保障をめぐる対立と緊張だ。そのハザマの、ど真ん中にいるにもかかわらず、ジャパンに緊張感がみなぎっているとは言えない。

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猫島 カツヲ

ねこじま かつを

ストリート系社会評論家。ハーバード大学大学院卒業。

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