ユニセフの「子どもの幸福度調査」から透けて見える日本人の問題 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

ユニセフの「子どもの幸福度調査」から透けて見える日本人の問題

自分の人生の尊厳を信じることは無料でできる

■日本の15歳は生活満足度が低い

写真はイメージです

 Report Card 16において、精神的幸福は、単に精神疾患にかかっていないという意味ではない。
   「生活満足感」(life satisfaction)と「15歳から19歳の10万人あたりの自殺率」(suicide rate per 100,000 adolescents aged 15-19 years)で指標化されている。
 
 まず「生活満足度」を見る。15歳の子どものうち「生活満足感」が高い割合は、33か国中1位はオランダだった。調査対象の子どもの90%が生活に満足と答えた。最下位から2番目32位の日本は62%だった。30位は韓国67%で、31位は英国64%だった。最下位33位53%はトルコだった。
 
 私は、この「生活満足感」というものの意味がよくわからない。Report Card 16の原文によると、「楽しいと感じるような情緒や、生活への満足感や、繁栄しているという感覚」(emotions such as feeling happy, satisfaction with life and a sense of flourishing)とあるのだが。

■日本の15歳から19歳は自殺率が高い

 次に「15歳から19歳の10万人あたりの自殺率」について見る。「自殺率」というのは、「人口10万人当たりの死亡者数」のことを意味する。
 
 2013年から2015年の41か国の調査によると、「15から19歳の10万人あたりの自殺率」はギリシャが1位で1.4人と最も少ない。2位がポルトガルで2.1人。3位がイスラエルで2.2人。
 
 日本は7.5人で30位である。29位が韓国で、31位がチリだ。興味深いことに、15歳の時点での生活満足度が84%のフィンランドが、自殺率8.2人で日本よりダメな32位だ。不思議だ。フィンランドでは、15歳過ぎて19歳までに何かが起きるのだろうか。ちなみに、最下位はリトアニアで18.2人だ。
 
 国家経済破綻の危機に瀕していたギリシャやポルトガルの子どもは、あまり自殺しない。自殺率と国家の経済状況はダイレクトには結びつかないらしい。
 
 私の経験からすると、15歳の人間などは視野が狭く、些細なことでクヨクヨ悩み傷つきやすく、未来については不安がいっぱいだ。自殺しても不思議ではない不安定な時期なのに、意外とみな生き延びていて、めでたいと思う。

■簡単に友だちを作れない日本の15歳

 15歳で友だちが容易に作れると思っている子どもの割合は、40か国の調査で、第1位ルーマニア83%。2位ノルウェー82%。日本が最下位から2番目39位69%で、チリが最下位68%だ。いかにも陽気であけっぴろげに見える南米の人々だが、すべてそうではないらしい。
 
 この調査の「友だち」というのが、どれくらいの深さの人間関係かよくわからない。私の感覚では、友人というのは知人よりは深い人間関係であるが、諸外国では、せいぜい「知人」程度が友だちなのではないか? 知人なら、すぐにいっぱい作れるが。

■学校に帰属意識が持てないと学力が伸びず生活満足度が低い日本の15歳

 あと興味深いデータに、学校への強い帰属意識を持つことと、学力と生活満足度との関連があった。学校に帰属意識が持てないと、学力が伸びず、かつ生活満足感を感じない割合が、21か国中で日本は第6位だ。ちなみに、1位はエストニアで、2位はアイルランドで、3位は韓国で、4位はフィンランドで、5位はオランダだ。
 
 学力と生活満足度が、通う学校への帰属意識の高さに影響を受けるということは、これは個人に対する集団圧力がそれだけ強いということだろうか? 集団の圧力や影響を過大に過剰に日本の子どもが感じやすいとうことだろうか?
 
 一方、ルーマニアは、学校に帰属意識を持てるかどうかと、学力と生活満足度との関連は低い。学校は学校、自分の人生は自分の人生なのだ。ルーマニアは、すぐに友だちが作れる割合が最高の83%という調査結果から判断すると、ルーマニアの子どもは、他人からあまり作用されないという意味で極めてマイペースであるらしい。

■学校でいじめられると生活満足度が低くなる日本の15歳

 もうひとつ興味深いデータが、「1か月に数度の頻度で学友から虐めを受けたことがある15歳の子ども」の生活満足度33か国調査だった。オランダの15歳は虐められても、生活満足度は80%に近い。メキシコもルーマニアもそうだ。
 
 つまり、オランダやメキシコやルーマニアの15歳は学友に虐められることと、自分の人生を別に考えているということだ。
 
 しかし、日本人の15歳は虐められると生活満足度が50%に落ちる。これは、33か国中32位。最下位33位はトルコだ。トルコでは、日本よりも虐められている15歳の幸福度が低く40%に近い。ちなみに31位は韓国だ。
 
 日本と韓国は、今回のReport Card 16において、よく似た結果が出ている。やはり隣国同士。ただし、友だちを容易に作れると答えた15歳は韓国のほうがはるかにはるかに多い。

次のページReport Card 16から透けて見える日本の大人の生きる姿勢

KEYWORDS:

オススメ記事

藤森 かよこ

ふじもり かよこ

1953年愛知県名古屋市生まれ。南山大学大学院文学研究科英米文学専攻博士課程満期退学。福山市立大学名誉教授で元桃山学院大学教授。元祖リバータリアン(超個人主義的自由主義)である、アメリカの国民的作家であり思想家のアイン・ランド研究の第一人者。アイン・ランドの大ベストセラー『水源』、『利己主義という気概』を翻訳刊行した。物事や現象の本質、または人間性の本質を鋭く突き、「孤独な人間がそれでも生きていくこと」への愛にあふれた直言が人気を呼んでいる。

 

この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください
馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください
  • 藤森 かよこ
  • 2019.11.27
水源―The Fountainhead
水源―The Fountainhead
  • アイン・ランド
  • 2004.07.08
利己主義という気概ーエゴイズムを積極的に肯定するー
利己主義という気概ーエゴイズムを積極的に肯定するー
  • アイン・ランド
  • 2008.12.05