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ユニセフの「子どもの幸福度調査」から透けて見える日本人の問題

自分の人生の尊厳を信じることは無料でできる

■Report Card 16から透けて見える日本の大人の生きる姿勢

写真はイメージです

 Report Card 16から見える日本の子どもの特質は、以下の3点にまとめられる。

1. 対人関係の問題と自分の人生の満足度を別に考えることができない。虐められると成績まで悪くなる。学校の中に居場所がないと、成績も下がる。学校は学校、他人は他人、自分は自分と考えることができない。
2. 日本の子どもが容易に気軽に友人を作れないことの背後にある他者恐怖症的心性。
3. 日本の子どもの自殺率の高さは、自殺しようとするときにストッパー(自分の生存を必要とする家族を含む他者の存在への想像力や、生きて実現させたい夢とか欲望など)の欠如を示している。

 日本の子どもが対人関係に敏感であり、ダメージを受けやすいということ自体は悪いことではない。逆説的に言えば、それだけ他者のことを考えているということになるのだから。

 日本の子どもが友人を容易に作れないというのも、特に問題ではないだろう。友だちを容易に作れないのは、逆説的に友だちの重みを感じているからだし、友を求めているからだ。他人など根本的にどうでもいいと思えば、簡単に誰とでも仲良くなるし離反できるのだから。

 また、15歳の時点で生活満足感が低いというのも問題ではない。そもそも、15歳くらいで、生活に満足できるだろうか? 繁栄していると感じるだろうか? いつも楽しいと感じるだろうか? 親や学校の管理下に置かれ経済的にも自立できず、行動の自由が制限されている15歳というのは、欲求不満の塊ではないだろうか?
 
 日本の15歳の人々の生活満足感の低さという調査結果は、彼らや彼女たちが、よく考えて自分に正直に回答したという証左かもしれない。15歳で生活に満足しているほうが異常だと私は思うのだが。

 問題は、日本の子どもの「生の感覚の希薄さ」だ。日本の子どもは、学力も健康状態も悪くない。日本という国家の子供向け政策や環境も悪くはない。世界基準で見れば、そこそこ恵まれている。なのに、その恵まれた状況を最大限に活用し自分の人生を豊かに大きくしようとする意欲に欠けている。自分を幸福にするのは自分の使命だと前提し、努力し人生に挑戦する姿勢が欠けている。自己確信に欠けている。

 このような姿勢で生きていれば、虐められることが起きても、「他人を虐めるような馬鹿など相手にしない。もっといい環境を求める!」と積極的逃亡を実行する。「こいつらが、昇れないほどの高みに行く!」と思って猛勉強する。もしくは、虐めを排除できる手段を必死で考え実行する。自殺なんて、もってのほかだ。

 私は思い出す。1993年の初秋に勤務先の姉妹大学のアメリカ南部の女子大に派遣されたときのことを。そこの学生たちに日本事情を話してくれと言われ、その頃に問題になってきた「日本の学校における虐め(bullying)で自殺者が出る問題」について話したことを。そのとき、アメリカ人学生は言った。「自分の人生の尊厳を考えれば、虐められて自殺するより、銃で復讐するほうが健康である」と。
 
 日本の子どもの自己確信のなさと生きることへの意欲の希薄さは、日本の大人のそれの反映だろう。まずは、日本の大人が自分の人生の尊厳を考えなければならない。自分の人生を信じて挑まねばならない。

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藤森 かよこ

ふじもり かよこ

1953年愛知県名古屋市生まれ。南山大学大学院文学研究科英米文学専攻博士課程満期退学。福山市立大学名誉教授で元桃山学院大学教授。元祖リバータリアン(超個人主義的自由主義)である、アメリカの国民的作家であり思想家のアイン・ランド研究の第一人者。アイン・ランドの大ベストセラー『水源』、『利己主義という気概』を翻訳刊行した。物事や現象の本質、または人間性の本質を鋭く突き、「孤独な人間がそれでも生きていくこと」への愛にあふれた直言が人気を呼んでいる。

 

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