第39回 いすみ鉄道の観光急行列車 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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第39回 いすみ鉄道の観光急行列車

いすみ鉄道で、大多喜駅から大原駅まで向かうノスタルジックな汽車旅。

 久しぶりに千葉県を走るいすみ鉄道を訪問、大多喜駅近くの鉄橋で撮り鉄をした後、大多喜駅からJR外房線との乗換駅である大原駅まで観光急行列車に乗車した。

 この列車は、かつて旧国鉄からJRにおいて全国で活躍したディーゼルカーを譲り受けて観光列車として走らせているもの。20世紀後半に日本各地のローカル線を旅した人にとっては懐かしい車両だ。

 大原行きの先頭はキハ28で、かつては急行用だった。JRになってから色々な塗装に代わったけれど、オリジナルな朱色とクリームの塗り分けが一番ぴったりくると思う。

 この車両に乗車するには、急行券のほか、指定券が必要だが2つあわせても600円。

 ノスタルジーにひたってのんびりした「汽車旅」を味わうには決して高価ではない。

大多喜城をバックに走るキハ

 10人ほどのグループが乗りこんできた以外は、キハ28は私ともう一人くらい乗っていただけ、4人ボックス席は独り占めだったが、大多喜着の列車がレストランキハとして営業していたためか、大きなテーブルが設置されて2人席になっていた。

 ちょっとかつてのイメージではないけれど、ドリンクや小物を置けるのでテーブル席は便利だった。

いすみ鉄道の急行列車

テーブルのある座席

 大多喜を出発。

 列車は、がたんごとんと実にのどかに走る。

 ときどき鉄橋を渡るけれど、意外に谷底が深くてちょっとスリリングだ。

 一応「急行」なので通過駅もある。

 国吉で7分停車。

 ホームの反対側に移動してキハの写真を撮ったり、すれ違う列車の写真を撮っていたりしていたら、あっという間だった。

のどかな田園風景

 上総東と西大原の間では、左手に池が見えるところで徐行する。面白いものが見えるとのアナウンスがあったので、窓を開けて(いまどき窓を開けられるのは珍しい)、カメラを構えると、ムーミンたちの人形が出迎えてくれた。
ムーミン列車の走るいすみ鉄道らしい演出で心が和む。

車窓から見えたムーミンと仲間たち

 大多喜から30分少々で終点大原着。

 もっと乗っていたかったが終点では致しかたない。

 JRのホームから列車が大多喜へ戻っていくのを名残惜しく見送って、帰路についた。

 これからも時折訪れてノスタルジックな汽車旅の雰囲気を味わってみたいと思う。

大原から大多喜へ戻るキハ

野田 隆

のだ たかし

1952年名古屋生まれ。日本旅行作家協会理事。早稲田大学大学院修了。 蒸気機関車D51を見て育った生まれつきの鉄道ファン。国内はもとよりヨーロッパの鉄道の旅に関する著書多数。近著に『ニッポンの「ざんねん」な鉄道』『シニア鉄道旅のすすめ』など。 ホームページ http://homepage3.nifty.com/nodatch/

 

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