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【神戸刑務所編スタート!】ヒガシエニシエ 嗚呼!! 花の神戸プリズン《さかはらじん懲役合計21年2カ月》

凶悪で愉快な塀の中の住人たちVol.27


 元ヤクザでクリスチャン、今建設現場の「墨出し職人」さかはらじんが描く懲役合計21年2カ月の《生き直し》人生録。カタギに戻り10年あまり、罪の代償としての罰を受けてもなお、世間の差別・辛酸ももちろん舐め、信仰で回心した思いを最新刊著作『塀の中はワンダーランド』で著しました実刑2年2カ月!
 じんさん、帯広刑務所を出所したらと思いきや、またまた「ワル」をしでかして今度はヒガシからニシヘ! 今度は神戸刑務所に3年間お世話になります。
 今日は懲りないじんさん、神戸へ向かう新幹線のなかのお話です。
 いよいよ神戸刑務所編スタートします。


■嗚呼!!花の神戸プリズン

イラスト:さかはらじん

 めでたく帯広刑務所を出所したとはいえ、このときのシャバでの生存記録はわずか10カ月間。シャバ見物に、冷やかしで来たようなものであった。そして、その間に起こした物語のあらすじは以下の❶と❷通りである。

 ❶『ハートブレイクなUターン』

 女とフィリピンに帰る飛行機の中で、パーサーとケンカになったボクがアキノ国際空港に着くと、待ち構えていたポリスに拘束されてしまう。そこで巻き起こす騒動の話。

 ❷『ヘリも来た、お騒がせ籠城事件』

 無免許運転で衝突事故(ひき逃げになる)を引き起こしたボクを、舎弟の一人が助けようと田無警察のマル暴へ掛け合うが、一蹴されてしまう。拳銃を出すという話をしていたことから田無警察は拳銃を持っているボクを、ジュラルミン盾を持った警官たちに包囲させ、パクろうとして大騒動する話。

 そんな物語を演じて、大好きな塀の中へまたまた戻っていくのである。
 3年の実刑判決をちょうだいしたボクは、控訴期限ギリギリまで警察に据え置かれ、そのあと、身柄を八王子拘置所へ移された。そしてそこに一週間もいないうちに、分類の行われている府中刑務所へ移送された。

 このようにしてボクは、お決まりのコースを辿って「監獄」という地獄の釜の中へと堕ちていくのであった。

 府中刑務所の送り房で数カ月が経過し、やって来た移送当日の朝、「お前たちを神戸刑務所へ移送する」と、官のお偉い人からの言い渡しを受けたボクたち移送組六人は、護送バスに乗って、朝の通勤で混雑する東京駅へやってきた。
 腰縄とロープで数珠(じゅず)繋ぎにされた珍妙な格好の六人組は、手錠のはまった両手で手荷物を引きずるように持ちながら、ただならぬ様相をしてゾロゾロと、新幹線ホームに向かって歩いた。
 この光景は一見してユーモラスに見えなくもないが、やはり異様であり、行き交う通勤客たちは驚きと好奇な目で通り過ぎて行く。
 新幹線ホームで数珠繋ぎにされたボクたちが待っていると、ボクたち護送組のを小さな女の子と手を繋いだ母親らしき二人が通りかかった。
 その女の子の円(つぶ)らな瞳がボクを見ていたので、ボクが「おはよう」と、笑って挨拶をすると、女の子は恥ずかしそうな顔をして、その母親らしき人の顔を見上げた。
 「おはようと言われたら、おはようと言うのでしょう」
 その母親らしき人が女の子に微笑みかけながら言った。すると、女の子の小さな口元が開き、小さな声で恥ずかしそうに「おはよう」と、ボクに挨拶を返してくれたのだ。
 ボクたちが何者なのか、その母親らしき人はわかっていたのに、女の子にきちんと、躾(しつけ)として礼儀作法を教えていた。そして自らも会釈すると、手をしっかりと握り合ってボクたちの前を去っていった。
 ボクは一瞬であっても、この素晴らしい母子と出会い、触れ合うことができたことに感謝した。
 まさにこれこそが、人生の出会いの素晴らしさだという感慨を抱き、ほのぼのとした気持ちにさせられた。

次のページお前らこれから数時間、着くまでピクリとも動いたらアカンで

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 2020年5月27日『塀の中のワンダーランド』
全国書店にて発売!

 新規連載がはじまりました!《元》ヤクザでキリスト教徒《現》建設現場の「墨出し職人」さかはらじんの《生き直し》人生録。「セーラー服と機関銃」ではありません!「塀の中の懲りない面々」ではありません!!「塀の中」滞在時間としては人生の約3分の1。ハンパなく、スケールが大きいかもしれません。

 絶望もがむしゃらに突き抜けた時、見えた希望の光!

 「ヤクザとキリスト〜塀の中はワンダーランド〜」です。

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さかはら じん

さかはら じん

1954年生まれ(本名:坂原仁基)、魚座・O型。埼玉県本庄市生まれの東京育ち。幼年 期に母を亡くし、兄と二人の生活で極度の貧困のため小学校1カ月で中退。8歳で父親に 引き取られるも、10歳で継母と決裂。素行の悪さから教護院へ。17歳で傷害・窃盗事件を 起こし横浜・練馬鑑別所。20歳で渡米。ニューヨークのステーキハウスで修行。帰国後、 22歳で覚せい剤所持で逮捕。23歳で父親への積年の恨みから殺害を実行するが、失敗。 銃刀法、覚せい剤使用で中野・府中刑務所でデビューを飾る。28歳出所後、再び覚せい剤 使用で府中刑務所に逆戻り。29歳、本格的にヤクザ道へ突入。以後、府中・新潟・帯広・神戸・ 札幌刑務所の常連として累計20年の「監獄」暮らし。人生54年目、獄中で自分の人生と向き合う不思議な啓示を受け、出所後、キリスト教の教えと出逢う。回心なのか、自分の生き方を悔い改める体験を受ける。現在、ヤクザな生き方を離れ、建築現場の墨出し職人として働く。人は非常事態に弱い。でもボクはその非常事態の中で生き抜いてきた。

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塀の中はワンダーランド
  • さかはらじん
  • 2020.05.27