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伊豆修善寺「新井旅館」で宿と町の歴史を学ぶ

伊豆は修善寺温泉「新井旅館」。国の有形文化財に 登録されている美しい宿です。

伊豆は修善寺温泉「新井旅館」に行ってきました。
明治5年創業の老舗です。
敷地内15の建物が国の有形文化財に
登録されている美しい宿。
最も歴史を重ねる明治14年築の「青州楼」は
六角形の洋風塔屋を持つ木造三階城郭風建築で、
これは当時、伊豆に広まっていた
ロシア正教の影響を受けている建物だそうです。

正面が明治14年築の「青州楼」

 

 

 

 

 

 
館内をめぐる「登録文化財ガイドツアー」が
1日に3回実施されています。
今回案内いただいたのは、副支配人の藤井秀之さん。
「古くて不便な建物をどうしたらお客様に喜んでもらえるか」
との思いから、文化財登録の平成10年から
ガイドツアーを続けられているそうです。
約40分、宿の歴史や建物にまつわる物語、
ゆかりの人々について分かりやすく説明してくださいました。

中庭に面して喫茶スペースもある

 

 

 

 

 

 

宿には多くの文人墨客が訪れていて、
中でも常連だった日本画家の安田靫彦(ゆきひこ)さんと
横山大観さんらの話には個人的に感動してしまいました。
なぜなら茨城県北茨城市の五浦六角堂を
取材したばかりだったからです。
五浦六角堂は明治時代に日本美術院研究所が置かれた地で、
東京美術学校(現、東京芸大)出身の
横山大観や安田靫彦らが学んだ場所。
北茨城市のことはいずれ書きたいと思いますが、
旅は良い循環をもたらすものだと感じました。
3代目の女将さんの同級生は高浜虚子さんの奥様であることも、
現在取材中の京都や箱根の老舗旅館とつながっていて
面白いなぁ、と思いました。
旅先の宿には芸術家の創作意欲をかきたてる
何かが満ちている気がします。
意欲ヘと向かう安らぎを与えてくれる場所。

ゆかりの文化人の作品を紹介する展示室

 

 

 

 

 

 

ガイドツアーでいいなぁ、と感じたのは、
ベテランも若手も、宿のスタッフみなさんが
館内建築の説明ができること。
温泉場と宿の歴史、それから日本建築の素晴らしさを
学ぶことができます。恐らく説明している方も聞いている方も、
知れば知るほどに宿と町と
日本文化が愛おしくなるのではないかと思いました。

外湯「筥湯(はこゆ)」に併設の望楼「仰空楼」から眺めた修善寺温泉街

 

 

 

 

 

 

 

館内をめぐる「登録文化財ガイドツアー」は10時、15時、16時の
1日3回(16時は宿泊者のみ)、飲み物付きで1500円。
できれば予約を。 http://arairyokan.net/event/guide.html

仁王門が誕生した修禅寺

 

 

 

 

 

 

この秋、「新井旅館」の前に文化財の木造屋敷を活かした
土産スポット「墨客の小径(ぼっきゃくのこみち)」が誕生したほか、
修善寺駅が木のぬくもりあふれる駅舎にリニューアルオープン。
温泉街のシンボルである「修禅寺」は
山門の改修工事を終えて新たに仁王門が完成しています。
11月中旬からは紅葉が宿や湯町を美しく彩ります。
ぜひお出かけください。

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のかた あきこ

のかた あきこ

福岡県福岡市出身。旅ジャーナリスト、フリーライター&編集者、温泉ソムリエ、まちづくり案内人。早稲田大学卒。旅行読売出版社編集部を経て2002年独立。旅と温泉に詳しく、宿本"旅美人SPECIAL"では編集長を務め温泉旅館に関する書籍を多数製作。その他、木楽舎『ソトコト』温泉日和連載。テレビ東京「ソロモン流」などでも紹介。本誌でも『一個人』×星野リゾート「大人の休息旅」を連載中。「まちづくり会議2011&2012」では全国からパネラーを集め、まちづくり人案内人を務めた。公式サイト「のかたあきこオフィシャルサイト」(http://nokainu.com)


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