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職場が辛いのは、「自己愛」のせいかも?

あなたは組織で苦しんでしまう人間かもしれない

「排除されて孤立したくない」「仲間外れにされて職まで失ったら終わりだ」……学校でも会社でも地域コミュニティでも、「排除されたくない」という気持ちで懸命に踏ん張ると、自分自身を追い詰めてしまうことになるかもしれません。逃げられない人、支配されやすい人に見られる5つのタイプとは……?

 

 

逃げられない人には5つのタイプがある

①安定死守型

日々平穏であることを望み、将来が見渡せることに安らぎを見出す。

就職では、公務員や一部上場企業に執着することが多い。終身雇用を前提にした生活設計をしており、安定の対極にある失職を何より怖れる。

家庭でも、家計の安定や子どもの将来を最優先に考え、そのためには、多少理不尽なことや不満があっても、我慢するという行動を取りがち。

②トラブル回避型

安定死守型と同じように平穏こそが一番というタイプだが、収入や身分の安定を求めるより、争うことを嫌う傾向が強い。

職場では、率先して意見を言ったり、先んじて何かしたりすることはなく、同僚など仲間が窮地に陥った際には、トラブルに巻き込まれないように息を潜める。

③承認渇望型

周りの人に認めてもらうことで安心するのがこのタイプ。

上司から無理難題を押しつけられても、同僚に込み入った頼みごとをされても、何とか応えようとする傾向がある。傍目には、真面目でいい人のように映るが、実は、認められるためにはいかなる犠牲も払うという打算が働いている。

④完璧主義型

何ごとも完璧にこなさなければならないと思い込んでいるタイプ。物の見方がオール・オア・ナッシング(すべてか無か)になりがちで、仕事においてもプライベートにおいても、100点満点の結果ばかりを求める。

また転職、異動願、離婚などは、経歴に傷をつけるものであり、みずからの敗北であると捉え、あまり選ぼうとしない。

⑤権威主義型

権威に寄りかかることで自分の価値を高めようとするタイプ。腰巾着とも呼ばれる。

だが、必ずしも権威や権勢のある人に寄りかかるだけでなく、イメージのいい企業に所属することに喜びを覚える人もこれに含まれる。

権威ある人が言うことは絶対であり、むしろ進んで追従する。

 

その気持ちの根底には自己愛がある

やや皮肉な表現を用いたが、こうした志向は誰の心の中にもある。そして、ひとりの人がピタリとひとつのタイプに当てはまるというよりは、複数のタイプが混在していることのほうが多い。

例えば、安定死守型の人ほど、トラブル回避型の傾向も強い。トラブルは安定を脅かすものだからだ。また、周りの人に認めてもらいたい承認渇望型は、何でもきちんとこなそうとする完璧主義型の顔も持つ。完璧主義で権威主義の人もいる。

実は、これら5つのタイプに共通するものがある。それは、自己愛が根底にあるということだ。自己防衛本能と言い換えてもいいかもしれない。

自己愛ゆえに他者からの承認を欲するし、自分を守るためにこそ、ときには理不尽な命令にも従うのだ。権威のある人の近くにいることで、自己愛が満たされる場合もある。

自己愛は誰の中にもあるものだし、それ自体は否定すべきものではない。ただ過剰な自己愛はときとして、自分を追い詰める。その結果、逃げられなくなってしまうこともあるのである。

 

<『他人の支配から逃げられない人』より抜粋>

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片田 珠美

かただ たまみ

1961年広島県生まれ。精神科医。京都大学非常勤講師。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第八大学でラカン派の精神分析を学ぶ。臨床経験にもとづき、心の病の構造を分析。著書に『無差別殺人の精神分析』(新潮選書)、『一億総ガキ社会』(光文社新書)、『一億総うつ社会』(ちくま新書)、『他人を攻撃せずにはいられない人』『プライドが高くて迷惑な人』(ともにPHP新書)、『他人の意見を聞かない人』 (角川新書)、『正義という名の凶器』(小社)、『賢く「言い返す」技術―人に強くなるコミュニケーション』(三笠書房、近刊)などがある。


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  • 2015.03.07