《失敗の本質》戦慄の形式主義——目的は感染を防ぐこと。PCRの同意書をとることではない【岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義㉑】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

《失敗の本質》戦慄の形式主義——目的は感染を防ぐこと。PCRの同意書をとることではない【岩田健太郎教授・感染症から命を守る講義㉑】

命を守る講義㉑「新型コロナウイルスの真実」

■DPATは、そもそも入る必要がなかった

 それでも検疫官には、船の中に入らなければいけない理由があるにはあります。船に入らないと、検査のためのサンプリングができないですからね。

 一方、DPATの場合は、本来、船に入る必要性そのものがなかった。

 DPAT(ディーパット)とはDisaster Psychiatric Assistance Team(災害派遣精神医療チーム)の略で、精神科の専門家です。彼らはダイヤモンド・プリンセスに入って、乗客・乗員の不安に対応していたわけですね。
 たしかに、平常時であれば精神科の面接は対面で、一対一で行われて、薬を出したり、認知行動療法をしたりするわけですけど、今は非常時で、ウイルス感染をできるだけ拡げないことが大事な場面です。
 だったら対面にこだわらずに、精神科の面接なんて全部スマホでやればいい。電話でもいいし、スカイプみたいなビデオ通話でもいい。そもそもダイヤモンド・プリンセスに精神科医が入る必要なんてなかったんです。

 でもDPATの人は一部の乗客に対しては物理的にレッドゾーンに入ることを強いられていました。PPEを着て診察に行って、結果、DPATからウイルスの感染者が出てしまいました。
 DPATから感染者が出るなんてことはそもそも論外で、先述のとおり、本来スキームがしっかりしていれば起こりえなかったことなんです。

岩田健太郎
「新型コロナウイルスの真実㉒ 」へつづく)

KEYWORDS:

オススメ記事

岩田 健太郎

いわた けんたろう

1971年、島根県生まれ。神戸大学大学院医学研究科・微生物感染症学講座感染治療学分野教授。神戸大学都市安全研究センター教授。NYで炭疽菌テロ、北京でSARS流行時の臨床を経験。日本では亀田総合病院(千葉県)で、感染症内科部長、同総合診療・感染症科部長を歴任。著書に『予防接種は「効く」のか?』『1秒もムダに生きない』(ともに光文社新書)、『「患者様」が医療を壊す』(新潮選書)、『主体性は数えられるか』(筑摩選書)など多数。


この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

新型コロナウイルスの真実 (ベスト新書)
新型コロナウイルスの真実 (ベスト新書)
  • 岩田 健太郎
  • 2020.04.11
インフルエンザ なぜ毎年流行するのか (ベスト新書)
インフルエンザ なぜ毎年流行するのか (ベスト新書)
  • 岩田健太郎
  • 2018.11.09