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『9月入学・新学期論』に対する文科省の考えと『教員の定額働かせ問題』の行方

第24回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-

昨年末に成立した改正給特法では、公立学校教員の残業時間の上限について「原則月45時間、年360時間」とする旨が盛り込まれた。政府も教員に対しての「働かせすぎ」を認めたことになる。その改正給特法にとって、今年が初年度になるのだが…はたしてどこまで守られることになるのだろうか。

■長引く緊急事態宣言の中、学校再開はどうなる?

4月30日、安倍首相は記者団に対して「5月7日から、かつての日常に戻ることは困難と考える。ある程度の持久戦は覚悟しなければならない」と述べて、今月6日までを期限としてきた緊急事態宣言を延長する方針を明らかにした。4日にも感染症の専門家などに意見を聴く「諮問委員会」や国会での報告と質疑などを経て、正式に決定される見通しである。

同日、萩生田文科相は参院予算委員会で、地域の感染状況を踏まえて段階的に学校を再開する考えを明らかにした。その中で、卒業や進学を控えた小学校6年生や中学3年生を優先して再開する可能性も示している。
ある小学校の校長は「話題になっている『9月入学・新学期論』に対する、文科省としての答えなのですかね…」とつぶやいた。
感染症拡大予防のために、全国の小中学校や高校、特別支援学校に対して政府が休校を要請したのは2月27日、その時点での期限は春休み終了までとされていた。しかし新型コロナウイルス感染症の拡大が収束しないなか、緊急事態宣言もあって、休校状態は4月が終わった段階でも続いている。いつ学校が再開されるのか、予想もつかない状況である。

そこで浮上してきたのが『9月入学・新学期案』だった。
もちろん、この案には課題も多く簡単に実行できるものではない。だからこそ慎重な議論が必要であり、冷静に検討する必要もある。それにも関わらず感情論による意見ばかりが目立っているのが現状だ。
安倍首相が来年の導入を目指して検討するとの報道もあるが、『9月入学・新学期論』は新型コロナウイルスの影響を最小限にするための策として出てきた話である。そこを忘れて、来年導入を持ち出してくるのは話の前提を理解していないし、混乱を招くことになりかねない。もっと真摯に議論したほうがいいのではないだろうか。

9月入学・新学期案について萩生田文科相は、「こういう事態が生じた時から、省内では検討事項としてのシュミレーションはしてきている。確かにメリットはある」と、4月28日の記者会見で述べている。
これについて、「文科省も前向きな姿勢」とする見方もあった。しかし、前述のように、萩生田文科相は学校再開の方針を示した。感染症拡大が収束する見込みがたたず、緊急事態宣言も延長される中、休校もズルズルと延びる可能性が高い。実際、神戸市や尼崎市、埼玉県などは、休校を5月末まで延長することを明らかにしている。緊急事態宣言の延長を待たず、10日までの休校延長を決めた自治体も少なくない。

休校期間が延びていけば、9月入学・新学期案も現実味を帯びてくるはずである。ただし、直前になっての導入方針、急な導入では混乱は大きくなるため準備期間が必要なことは言うまでもない。
一方で、早期再開すれば「9月入学・新学期案」の存在感は薄れる。もう学校は動いているのだから新しい制度を持ち込むことはない、ということになるからだ。それが、9月入学・新学期案に対する文科省の解答なのかもしれない。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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