アメリカ抜きで発効の可能性は? 二国間FTAという手もある? 3分で分かるトレンドワード【TPP】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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アメリカ抜きで発効の可能性は? 二国間FTAという手もある? 3分で分かるトレンドワード【TPP】

【TPP】を慶應義塾大学教授・渡邊頼純氏が徹底解説③

●二国間FTAという手もあるが……

渡邊…非常に鋭い指摘です。じつは日米のFTAはアメリカの方でも代替案として出ています。しかしトランプが文字通りの「自由な」“Free Trade Agent”を提案しているのかどうかというのは分からない。彼は平等な貿易というのを強調していますが、それは2国間の数字だけを合わせる強引なものになってしまう危険性があります。例えば「日本が車を180万台輸出しているなら、アメリカからも180万台輸出させろ!」「日本は牛肉の関税を38.5%にしているんだから、今度は日本車の関税も38.5%にしろ!」といった風に。そうした「相互主義」とか「結果主義」は1980年代のアメリカの貿易スタンスでした。GATTのウルグアイ・ラウンドもあり、日本はなんとかそれを抑えてきたのですが、日米の2国間の協定を結ぶともう一度そういうことを言われかねない。

トオル…う~んそう聞くと怖いなあ。やっぱりTPPがベストというような気がします。

渡邊…結局、TPPがなぜ重要かと言うと「ルールづくり」なんです。国際的な貿易のルールは1994年のGATTのウルグアイ・ラウンド以降止まってしまっています。しかし以降ご存じの通り世界は大きく変わってきています。中国の台頭があり、リーマンショックによる経済の大変動。経済が変わり、貿易も変わり、投資も変わり、産品も変わっていく。ウルグアイ・ラウンドが出来たころはちろんスマホはありませんし、パソコンも今よりはるかに大きく重く使いづらいものでした。国際経済のあり方が変わり、人々の生活が変わっているのに、何十年間も国際的に合意された貿易の新しいルールがない。私は大きな危機意識を持っています。そういったルールがないと国際関係までもどんどん悪くなっていってしまう。私は本来貿易というのは「平和な戦争」だと思っています。武器を使わず、ドンパチをやらずに、その国の知恵と技術を結集して市場という名の陣地を取り合っていく。でもその争いには当然ルールが必要なわけで、そういう意味でもTPPという枠組みが求められています。

トオルシズカ…ありがとうございました!

 

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