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栗山英樹が語る「采配」の「微妙なニュアンス」。監督が手を打つべきときとは?

2023 WBC決勝で日本が14年ぶりに優勝

 

 ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は21日(日本時間22日)、米マイアミのローンデポ・パークで決勝が行われ、日本が米国を3-2で下し、2009年第2回大会以来14年ぶり3度目の優勝を飾った。

   日本を世界一に導いた栗山英樹監督の手腕にも喝采が浴びせられている。
 選手、コーチ、スタッフ……細かな気配りと信念を貫き、徹底的に話し合う姿勢は指揮官栗山監督の真骨頂だ。しかし氏のすごさは、それだけにとどまらない。監督しての采配、決断である。
 WBCでも見せた栗山監督の「采配」「決断」はいかにはまったのかーー。『「最高のチーム」の作り方』に、その秘密が書かれている。

 

 

■「勝つとしたらどういう手を打つのか」を考える

「人生の運」を全部使っている感じ、とでも表現すればよいのだろうか。
 試合中は、とにかく後手に回らないことだけを心掛けていた。そして、「どういう手を打ったら勝てるのか」ではなく、「勝つとしたらどういう手を打つべきなのか」をつねに考え、感じたことを感じたようにやった結果が、客観的に見れば「はまった」ということになる。

 ただ、「打つ手が、はまったから勝った」というのは少し違っていて、「勝つために、はまらなければならない手を打った」だけなのだ。

 なんだかややこしいことを言い出したな、と思われるかもしれないが、このニュアンスの違いを汲み取っていただきたい。

 勝てば日本シリーズ進出が決まるクライマックスシリーズの第5戦(2016年当時)、故障によって戦列を離れていた主力メンバーが再び揃い、ベストメンバーに戻っているホークス相手に、序盤から4点差を追う展開で勝ち切るというのは、それこそ打つ手がすべてはまらなければ勝てるわけがない。

 0対4から勝つことを前提に、ここから勝つにはどういう展開になるのか、そのためにはどんな手を打てばいいのか、それだけを考えていた。

 思いきった手でもなんでもない。勝つための手を打っただけなんだから、それは普通のことだ。そうなれば勝つし、そうならなければ勝てない。

 だから、「はまった」というギャンブルが的中したような感覚はあまりなく、勝つんだったらこうなるしかない、と思ったことが実際にそうなっただけ、というふうに受け止めていた。

 当たり前のことだが、野球は選手がやるものだ。投手が抑えて、野手が守って、打者が打てば、それだけで勝つ。

 でも、毎日試合をやっていれば、それだけでは勝つのが難しいケースも出てくる。そんなとき、勝つとしたらどういう手を打つべきなのかを考える。それは監督の仕事だ。

 それがその通りになったら、勝つことがある。だったら、監督は手を打たなきゃいけない。
 そして、もしその通りになって勝ったら、それは選手のおかげ。だって、やったのは選手なんだから。

 あの第5戦、1回表にいきなり4点取られた。なのに、中盤からは完全にこっちのペースになっていた。
 あれをもう一回やれと言われても、たぶん無理だ。
 勝つときというのは、そういう流れができているはずなんだと思う。

 野球の神様は、はじめからこちらが勝つと決めている。それを邪魔しないように、邪魔しないように持っていくしかない。
 自分が決めているんじゃない。野球の神様がそういうふうになるようにしているのだ。
 人は余計なこととか、欲が出てきたときに違うことをする。そうしないようにするだけだ。

(『「最高のチーム」の作り方』より抜粋)

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