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「自民党改憲草案」の問題点

憲法改正の覚悟はありますか? 【1/3】

第二次安倍政権が長期化し、各メディアやインターネット上で「憲法改正」の論議を目にする機会も多くなってきました。でも、果たして私たち国民は、自民党の憲法改正案の中身を正しく理解しているでしょうか?
「憲法改正をするために必要なものは“正しい憲法観”である」と説く、憲法学者・小林節博士の著作より、憲法改正の問題点を3回に渡って検証していきます。
連載第1回目のテーマは、『「自民党改憲草案」の問題点』です。

「日本国憲法改正草案」(いわゆる「自民党改憲草案」)とは、自民党が野党時代の平成24年4月27日付で出した現行の「日本国憲法」の改正草案である。
 なぜ自民党は現行憲法を改正したいのか。これについては、同時期に自民党が発表した「日本国憲法改正草案Q&A」を引用しよう。

 Q なぜ、今、憲法を改正しなければならないのですか?
   なぜ、自民党は「日本国憲法改正草案」をとりまとめたのですか?

 A わが党は、結党以来、自主憲法制定を党是としています。占領体制から脱却し、日本を主権国家にふさわしい国にするため、これまで憲法改正に向けて多くの提言を発表してきました。
 現行憲法は、連合国軍の占領下において、同司令部が指示した草案を基に、その了解の範囲において制定されたものです。日本国の主権が制限された中で制定された憲法には、国民の自由な意思が反映されていないと考えます。そして、実際の規定においても、自衛権の否定ともとられかねない9条の規定など、多くの問題を有しています。<中略>

 

 また、世界の国々は、時代の要請に即した形で憲法を改正しています。主要国を見ても、戦後の改正回数は、アメリカが6回、フランスが27回、イタリアは16回、ドイツに至っては59回も憲法改正を行っています(平成25年1月現在)。しかし、日本は戦後一度として改正していません。
 平成22年に発発表した党の「綱領」においても、「日本らしい日本の姿を示し、世界に貢献できる新憲法の制定を目指す」としています。諸外国では、現実との乖離(かいり)が生じれば憲法を改正しています。

 私は30年来の改憲論者である。憲法を「改正(改良)」すること自体に反対はしない。しかし、「改悪」は絶対に反対である。
自民党の改憲派議員や安倍首相の言動を見ていると、「現行の日本国憲法が改悪される」としか思えない。なぜなら、彼らの「憲法観」が根本的に間違っているからである。
 何が間違っているのか? 「自民党改憲草案」の問題点を追及していきながら、その答えを明らかにしていこう。<続く>

<『憲法改正の覚悟はあるか』(小林節/著)より抜粋>

 

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小林 節

こばやし せつ

慶應義塾大学名誉教授、弁護士。法学博士、名誉博士(モンゴル、オトゥゴンテンゲル大学)。

1949年東京都生まれ。1977年慶大大学院法学研究科博士課程終了。

ハーバード大学ロー・スクール客員研究員等を経て、1989-2014年慶大教授。

その間、北京大学招聘教授、ハーバード大学ケネディ・スクール・オヴ・ガヴァメント研究員等を兼務。2014年慶大名誉教授。

 著書『「憲法」改正と改悪』(時事通信社)、『白熱講義!日本国憲法改正』『白熱講義!集団的自衛権』(小社)他。


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