落ち着いているつもりなのに【森博嗣】新連載「道草の道標」第10回
森博嗣 新連載エッセィ「道草の道標」第10回
【質問にお答えします】
まずはこの質問。「よく明日死ぬとしたら、何をしますか? という質問がありますが、森先生は明日からあと100年生きられますといわれたら、何をしますか?」
何もしません。普段どおり。よく仮定を持ち出す質問がありますが、その仮定が非現実なら影響されません。考えもしないし、たとえ考えても、なにも思い浮かばない。
では次。「先生にとって頭のいい人とは、どのような資質や特徴を持つ人だと思われますか。またご自身が教鞭をとっていた際、それに該当する学生は、どれくらいいらっしゃいましたか」
いろいろな頭の良さがあって、一概にいえません。回転が速い、発想が豊か、処理が的確、博学、柔軟、独創、などとあって、さらにそのそれぞれに広がりがあります。資質や特徴もさまざまで文章化できない。また、教鞭を取るくらいでは才能は発見できません。その人が何をしたか、しか見ることができない。なにをしそうか、で判別するよりは的確なので、しばらくその人が生み出すものを見守ることで、片鱗がわかる程度。
次は専門的。「死体をドラム缶に入れてコンクリ詰めみたいな話がありますが、ドラム缶に死体を入れてコンクリートを流し込む作業って非常に大変じゃないですか? そしてそれはもの凄く重くて運ぶのが大変だと思うのですが、つまり非効率この上ないと思うのですが、実際はそれほど難しくないのでしょうか?」
殺人よりは難しいと思います。普通サイズのドラム缶は200リットルで、水を入れると200kg(容器で20kg以上プラス)。人間の比重は水と同じくらい。コンクリートは水の約2.3倍。つまり、人間とコンクリートでドラム缶を満たすと約450kgの重さになり、移動にフォークリフトが必要。また、この量のコンクリートを練るためには、かなり大きなミキサが必要。生コン屋さんに注文すれば持ってきてくれるが、悪事発覚の恐れがある。ただ、耐久性は高く、海底か土中に隠すことができたら、自然劣化することが少なく、100年くらいは隠し通せる可能性が高い。
最後の質問。「被害者の加害者への糾弾が半永久的に続くことは、罪の有無にかかわらず、被害者意識のある限りしかたのないことでしょうか」
そのように観察できますね。自分だったら、そこまで執着しないだろう、と想像するが、世間には「執念」といえるものを一生涯貫く方がいらっしゃる。全員がこうだとは思わないが、その種の事例が多数あるので、不自然ではなく、普通なのかも。
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