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アップルより先に展開していた、北米ホンダの「Think」キャンペーン

「最小限主義の心理学」不定期連載第12回

 Think simple

 ホンダがアメリカで1978~80年ごろにやっていたThink simpleというキャンペーン広告。

 大きなフォントで一言メッセージを掲げ、その解説をするスタイルは、その後アップルが行ったThink different(1997)のキャンペーンに似ている。

 

 解説文はこんな感じだ。

「複雑化が進む世の中で、ホンダはシンプリシティ(シンプルさ)のオアシスであり続けた。
 だから、ドライブのシンプルさ、所有のシンプルさ、歓びのシンプルを車に求めるなら、1979のホンダを考えてみることがいいだろう」
<原文>
In an increasingly complicated world. Honda has remained an oasis of simplicity. So if you’re looking for a car that’s simple to drive, simple to own, and simple to enjoy, it makes good sense to think about our Hondas for 1979.
 
 右下にあるように、このキャンペーンはWe make it simple(私たちはそれをシンプルにする)とも呼ばれている。

◆下のリンクは同キャンペーンの映像広告。
https://youtu.be/1fsPpJA_UwY
 
「これはただのキーではない。哲学だ」という話から、車のあらゆるところのキーが一つでまかなえる、シンプリシティだ。と。
 キャンペーンの広告には、Simplicityという単語はもちろん、Simplify(簡素化)もよく出てくる。実際に車のデザインはシンプルで、キーのデザインもシンプルだったりする。
 最初の頃のシビックは今見ても驚くほどクールだ。それがシンプリシティを追究した結果だと言われれば、なおさら芸術品のように見えてくる。
 
 これらのキャンペーンを制作していたのは、海外サイトで調べてみるとRubin Postaer & Associatesというサンタモニカの広告代理店らしい。ホンダは30年間もこのエージェンシーに広告を任せていたという。

 当時のホンダが哲学的にシンプリシティを追究していたのかどうかはわからない。結果的にシンプルになったものを、広告代理店が哲学的に捉えたのかもしれない。
  We make it simpleとThink simple. そしてシンプリシティ。
 今ではThink diffierentキャンペーンとシンプリシティな製品で成功したアップルの言葉に聞こえてしまうが、当時のアメリカの人々はホンダが発したこの言 葉のイメージをどう捉えただろう。
 ホンダがそのままシンプリシティを追究し続け、この広告を続けていたら、アップルの歴史も変わっていたのかもしれない。

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沼畑 直樹

ぬまはた なおき

ミニマリスト。テーブルマガジンズ代表。元バックパッカー。

2013年、「ミニマリズム」「ミニマリスト」についての記事を発表し、佐々木典士氏とともにブログサイト≪ミニマル&イズム(minimalism.jp)≫をたち上げる。 著書は、小説『ハテナシ』、写真集『ジヴェリ』『パールロード』(Rem York Maash Haas名義)など。


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