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観光地に行かない男一人旅のススメ

現在観測 第51回

まず小さな駅で降りてみよう

 やり方は簡単。観光スポットもなにもないどこかの小さな駅で降りてみる。もちろん私にとっては初めての駅だ。しかし、そこに住む人にとって、そこは日常の中にあるものであり、毎日ここから家へと帰っていく。それを自分も体験するのだ。

 駅前のスーパーに行く。お土産屋さんや、観光客向けの飲食店ではない。地元のスーパーに行くことで、地元の人と同じものを食べることができる。スーパーなんてどこでも一緒だろ、と思うかもしれないけれど、意外と侮れない。見慣れない天ぷらや、食べたことのないパン、飲んだことのないジュースなどが並んでいる。何気ない発見だが、そういう見慣れないものを見つけた時が嬉しい。

 スーパーを出たら次は住宅街を歩いてみる。日本だと意外に自分の住んでいる景色とあまり変わらなかったりする。ただ、驚くほど静かな街だったり、一瞥するだけで吠えることを諦めている犬に出会ったりすると、知らない遠い場所に来たのだと自覚する。もしここで私が生活するとしたら~、などと考える。きっとこのくらいのアパートで、ここで買い物をして、駅まで歩くんだろうな、と考えたりするのが楽しいのだ。

 その街に自分の「イフ」の人生を描くのだ。

消雪パイプがある道路

 その土地「ならでは」の小さな発見もある。東北に行くと道路に凍結防止や雪を溶かすための「消雪パイプ」が埋め込まれて、道路が茶色く変色しているのを発見する。綺麗な観光地も楽しいけれど、そのような日常の景色が新鮮に感じるのだ。地元の人に話を聞いたら「消雪パイプ」を「しょうぱい」と言っていた。小さなおっぱいみたいだな、と思いながら自分の胸を見るけれど、私は男だ。小さいとか、大きいとか、そのようなおっぱいは持ち合わせていないのだ。ただ、それもポイントだ。

 

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地主 恵亮

じぬし けいすけ

1985年福岡生まれ。「デイリーポータルZ」で活躍するライター。



「彼女がいる風の」写真が話題となり、



2013年末イギリスのガーディアン紙「世界一気持ち悪い男」第1位に選出。



2014年より東京農業大学非常勤講師。



著書にテレビドラマ化された『妄想彼女』(鉄人社)、



『昔のグルメガイドで東京おのぼり観光』(アスペクト)などがある。


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