■加入当初のチームはポジティブな人ばかりだった

――長い現役生活でそういう振り返りが頭の中でできるようになってきた。

阿部　そうですね。

――そういう振り返りはどのタイミングでするんですか。

阿部　夜遅くですけど、埼スタとか、関東近辺で試合が終わったら、大原（練習場）に戻って、疲労回復のために水風呂に入るんですね。そのときに思い出したりして頭の中で、イメージする。それがきちんとできたら「終わり」という意味で、本を読むとか違うことをして切り替える、というパターンです。

――誰もいない、ひとりの空間。

阿部　選手はいないです。スタッフはまだ何人かいたりしますけど。

――しっかり「切り替える」。そういうところは変わったところですかね。

阿部　そうですね。あんまり引きずらないようになりました。ジェフのときは負けたら何時間も引きずっていたし、レッズに来た当初も「ホントどうしよう」みたいなところがあったんですけど、レッズで時間を経るうちに、それも減っていったように思います。

――レッズというチームの環境がそうさせた、ということですか？

阿部　加入当時は切り替えがうまい選手、すごくポジティブな選手が多かったんですよね。

――ああ、闘莉王選手や小野伸二選手……

阿部　はい、岡野（雅行）さん、ポンテ、ワシントン……坪井（慶介）くん、（鈴木）啓太もいて。絶対にネガティブにならなかった。そういう影響もあったし、それにＡＣＬもあったので、すぐに試合が来るんですよ。だから凹んでいる時間がなかった（笑）。引きずっている時間はないんだな、って思いましたよね、レッズに来てから。そういう意味で、昔の僕のままでいたらどうなっていたのかもわからない。それは良かったのかな、って思います。

――なるほど。

阿部　あと、レスターへの移籍を挟んだことも僕自身にとっては大きかったと思います。ワールドカップが終わった後、気持ち的にもやり切ったというか、出し尽くしてしまったような感覚があって、自分の中でこのままじゃプレイヤーとして終わってしまう、と感じた。それでイギリスに行かせてもらって、その中で学んだことも多かったけれど、何より改めてレッズという存在の大きさを感じることができた。いい時間だったな、と思いますね。

――一方で変わらないものは。

阿部　まだ何も成し遂げていないのでね。ルヴァンカップを取ることができたし、年間勝ち点１位はもちろんうれしい。僕たちにとっていいきっかけになるとは思うけれど、Ｊリーグのタイトルを取って、クラブワールドカップに出るという目標に対しては、まだ成し遂げていない。そこへの思いは変わらないです。

でも、基本的に変わらないんですよ。レッズで戦うということは、いろいろなものを背負っていかなければいけない、と思っています。これだけ大勢の方が応援してくれていて、戦ってくれていて、パワーを与えてくれている。それはプレッシャーなのかもしれないけど、僕はそれを感じなければいけない……というより感じたいと思っている。それは最初からそうですから。

――あえて感じたい。

阿部　はい、そのプレッシャーはを感じていたいし、当たり前になったらダメだなと思っていますね。だから毎試合、それを感じるようにしています。
【第二回に続くーー】