AV業界の「未払い」「二次使用」問題と闘う!かさいあみを突き動かす“亡き先輩”の教え |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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AV業界の「未払い」「二次使用」問題と闘う!かさいあみを突き動かす“亡き先輩”の教え

■SNSを騒がす「ドバイ案件」はAV新法が生んだ?

 

▲「ドバイ案件はAV業界だけではなく、他の業界でも起きている」と明かしてくれた

 

——SNS上では「ドバイ案件」「ヤギ案件」という騒動が起きていますが、そういった危ない目に遭った方にお会いしたことはありますか。

かさい 私のところに「ある女優さん達が行ってますけど大丈夫ですか」とちょくちょく相談が来ています。被害があれば受け付けますけど、謎リークは事務所に言って欲しいなって感じです。でも、4人で海外へ行ったけど1人だけ帰ってこられなかったという話を耳にすると心配です。ずっと戻ってこなければ失踪になるから、警察とか然るべきところへ届け出をするしかないでしょうね。

 こういうのを一概にAV新法のせいにする人もいますけど、多分前からこういう事ってあったと思うんです。それが円安で日本よりも海外の方が稼げるからって、よく調べないで行くと危ない目に遭うのは当然ですよね。自分の身は自分で守って欲しい。

——AV新法成立以降、企画単体女優さんで仕事が殺到する人とオファーが来ない人の二極化が進んだと聞きましたけど、どうしてでしょう。

かさい 契約書にサインした後、出演者の差し替えが効かなくなったのが大きいと思います。

 昔は、“売れっ子ではないが仕事は常にある”女優さんって、差し替えの出演に助けられていたんです。私もそうだったんですが。

 女優さんが体調不良などで現場に来られなくなると、私のところに朝5時くらいにメーカーから「今日9時から現場あるけど出られる?」って電話がかかってくるんです。そしたら「行きます。大丈夫です」って返事して出演するんです。

 他事務所のマネージャーさんからも「ウチの女優が体調崩しちゃって夕方からワンコーナーだけ入れる?」とヘルプが来ることもよくありましたね。そうやって出演本数を稼いでいました。今はそういうことがほとんどないんだろうなと思います。

 事務所もメーカーも数字が見込める子しか採用しなくなっているじゃないですか。たとえば、瀬戸環奈ちゃんクラスのメーカーの専属でいけそうな子は売り出すけど、特別な存在ではない女の子がメーカー制作のAVに出るのは本当に難しくなったと思います。

 私は台湾発の配信プラットフォームSWAGの運営に今携わっていますが、同人系の素人女優さんの話を聞くと同人AVで危ない目にあった話とか、ギャラ5万円ですって聞いて現場にいったらおじさんが一人いるだけでカメラもないのに「撮影します」なんてことも沢山聞きます。

——先ほどの「ドバイ案件」ではないけど日本国内も海外も怖いですね。

かさい はい。だからこそ女の子は自分のことをもっと大切にして欲しいと思います。「ドバイ案件」や「海外売春案件」なんかはAV女優の名前も表に出ているのでAVの問題かと思われがちですけど、普通のキャバ嬢やインフルエンサーなども名前が上がっていたりするのでこれはAVだけの問題ではないです。

 先ほど話した「未払い問題」なんかはAV業界の問題です。これは昔からあった話で、私と仲が良かった紅音ほたるちゃんも未払いがあったって言ってました。

——あるAV業界の方から「今までの膿は全部出し切った方がいい」と聞いたことがあります。未払い問題もその一つでしょうね。

かさい そうですね。その人が言う通りだと思います。AV業界って今までは陰の存在だったじゃないですか。でも、AVを辞めた後に芸能界へ転身した女優さんとかが出てきたりして日が当たるようになった。そんな中でAV新法が作られましたよね。現場は混乱するような内容でしたけど、国会議員さんに「AV業界はこんなところなんだ」と知ってもらえたのはメリットだと思います。

 AVシンポジウムに議員さんが来たり、法律改正のために弁護士さんが名乗り出てくれたりして色々と動いています。だったらきちんと法整備して、女優さんや男優さんなどのクリエイターが皆んなが安心して仕事ができる環境を作って欲しいなって思います。

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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