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AV業界の「未払い」「二次使用」問題と闘う!かさいあみを突き動かす“亡き先輩”の教え

■「ギャラ未払いは当たり前じゃない」と伝えたい

 

▲AV女優引退後は現役女優を支援する活動を行なっているかさいさん

 

——二次使用問題と別にギャラ未払いがあったとXで話題になりました。どうしてそんな問題が起きたのでしょうか。

かさい この問題も一部の事務所で発生したことですが、女の子に「退職金代わりに引退した時にまとめて支払うから」とか「収入が多いと税金の支払いが高くなるから」などと言ってギャラを事務所がプールしちゃうんです。

そして事務所はそのお金を運転資金に回してしまう。「やっぱり支払って欲しい」と女の子に言われてもお金がなくなってしまっている、というケースがあります。

——どうして事務所は女の子のギャラにまで手をつけてしまうのですか。

かさい これは推測ですが、他の事業にも手を広げてしまって、それが上手くいかず、女優さんに払う出演料にも手をつけてしまったのだと思います。

 ただ、女優の側にも問題があって、私も昔は自分のギャラがいくらなのか把握しないまま現場に行っていました。これが芸能界であれば、自分の出演料はいくらで、事務所がマネージメント料で何割持っていくか把握していると思うんです。でも、AV業界はその辺がすごくいい加減だったんですね。

 同じ現場で女優が集まると絶対ギャラの話になります。ある女優さんが「今日の現場すごくいいね。ギャラこんなだよ」と言うと、「ええ!私はこれくらいしかもらってない」といったやり取りがよくありました。私はそういう話を聞きながら、事務所によってギャラが違うんだなって思っていましたね。

——業界のお金の流れがわかるようになったのはいつ頃ですか。

かさい 事務所を辞めてフリーになってからです。メーカーの人が「ウチは事務所にこれぐらい払っているよ。フリーになったからこれぐらいでいい?」と話をきちんとしてくれたんです。

 そこからスカウトバックとかを支払って残ったお金が女優さんの手元にくる。そういう仕組みは、フリーになって直接メーカーさんと出演交渉しないとわからなかったですね。

 今は自分のギャラがいくらなのか表示されているので、女優のお金の感覚は変わっていると思います。

——ギャラが表示されたことでどんな風に意識が変わったのでしょうか。

かさい 「自分はAV女優としてこれくらいは稼ぎたいから、今月は何本の作品に出演したい」とか「イベントもやらないと」とか自分から発信するようになってきましたね。「事務所はギャラからマネージメント料を取っているんだから、その分しっかりと売り出して」などと主張する女優さんが増えたと思います。

 私は今、九州に住んでいますが、東京に行くたびに女優さんから近況を聞いたり、DMでやり取りしたりしていると本当に応援したくなりますね。

——一部と言え、女優さんが事務所からギャラをもらっていないと聞いた時はどんな気持ちでしたか。

かさい 驚きしかなかったですね。何も知らないで業界に入ってきた女の子の中には、そもそもメーカーが払っていないと思っている子もいるんです。そこの誤解を解くところからスタートですね。

 私、三代目葵マリーさんと「フリー女優連盟」を立ち上げたんです。連盟の仕事をしている時に事務所のスタッフさんとも関わることがあったので「どうなんですか」と未払いの問題について聞いていました。でも、向こうが聞かれるのを嫌がっている雰囲気もあって、聞きにくくなったんですよ。

 だからといって見過ごせません。私一人では抱えきれないので、今は映像実演者協議会に対応をお願いしています。

——ギャラがもらえないならAV業界で働く意味がありませんよね。

かさい そうなんです。夢をもってAVの世界に入ってきたのに裏切られたも同然じゃないですか。(未払いがあったなら)「出演作品を消してください」と言われて当然ですよね。そもそも仕事に対して、対価が支払われないというのは、人権侵害のようなものです。その意識が低い人がいることも残念でした。

 今、AV新法で業界がどんどんクリーンになっているって言いますが、被害にあった子は「私達の声は届いていないじゃん」と落ち込んでいます。何とかしてあげたくて動いています。

 AV女優になりたくて入ってくる子は、有名になりたいし、AV嬢として成功したい思いが強い。それにはお金もついてくるし、それが対価だと思います。でも、業界の人達は結構忘れがちなんじゃないかと思います。私もたまに忘れちゃいますけど、ギャラ未払いは当たり前じゃないよっていうことをやっぱり訴えていきたいです。

——女優さんが表立って声を上げられない理由はなんでしょうか。

かさい まず、「ファンに心配をかけたくない」という思いがあると思います。後は、自分のブランディングがあるので表沙汰にできないとか、事務所と穏便に済ませたいから強く言えない子がほとんどです。こういう行為をする事務所は本当にごく少数ですが、二次使用料問題も絡んでいるから絶対になくしたいです。

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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